新参者で好きになった東野圭吾作品
私にとって、加賀恭一郎は東野圭吾作品を読むきっかけをもらった作品だった。
ドラマを見て、映画を見て、そして・・・
この本も加賀恭一郎シリーズではかなりの大作だけど、それを2時間に詰め込み、漏らさず楽しめる作品になっていた。
親の愛と子の親を思う気持ち
「祈りの幕が下りる時」は最初は人間関係が複雑に交錯する。
伊藤蘭演じる加賀恭一郎の母親が物語の最初に出てくる。
これまで謎になっていた母親。
その母親のこと、そして山崎努演じる父隆正のこと。
厳格な父の死に目に頑なに向き合おうとしない加賀の根本的な部分が明かされる。
日曜劇場で新参者が初登場したのは2010年だったんだ。
向井理なんてあの頃、まだ無名に近い存在だったなぁ。
まぁ映画には出てこないのだけど。
従兄弟役の溝端淳平もまだまだ線の細い役者って感じだったけど、今回は最初は松宮の推理で物語を引っ張る形になる。
腐乱死体の発見から物語は始まる。
そこまで見せるかってところまで見せる。
松宮は近くの橋であがった身元不明の焼死体との関連を提唱する。
しかしDNA鑑定の結果は同一人物ではなかった。
加賀にそのことを伝えると、加賀は「俺だったらDNA鑑定するものから疑う」と言う。
DNA鑑定は部屋にあったタオルや歯ブラシから採取して行うらしい。
しかし、それすらも偽造されていると言うことだ。
そして、腐乱死体のあった部屋の住人と焼死体が同一人物であるということが判明する。
それでも繋がりが見つからない。
腐乱死体となった女性、押谷 道子の身の回りからキムラ緑子の朝居厚子という女性が浮上する。
しかし、厚子は自分のことを何も語らない老人ホームに保護された人間であった。
道子はその女性が「朝居厚子」ではないかと声をかける。
朝居厚子は中学時代の同級生の母親だった。同級生の娘こそ松嶋菜々子演じる朝居博美だった。
道子は母親のことを聞くという名目で博美に会いに博美の初日舞台を見に行く。
嫌だなぁ〜こんな同級生。
博美の過去はかなり悲惨であった。
厚子が実印を持って父親と自分を捨てていた。そのことで博美は転校し、父親は自殺したことになっていた。
加賀も捜査に加わったことでこの事件に自分が深く関わっていることを意識する。
加賀の母親は既に亡くなっていた。その時に荷物の引取の連絡を受けていた。
そこにあったカレンダー。
それは最初の腐乱死体の部屋にあったカレンダーに書いてあった日本橋界隈の橋の名前がかかれていたもので、書いた人物が同一人物であった。
繋がる人間関係。
博美と加賀は数年前に仕事で対面していた。その写真を松宮が見つけ加賀に博美のことを聞きに行く。
加賀も事件を聞き、博美の舞台を見に行く。そして「やっぱり超美人だな」と本音を言う。
松嶋菜々子きれいだわ。
小説を読んでいるとき、加賀恭一郎は頭の中で阿部寛なんだよね。松宮は溝端淳平だし。
でも博美はぼんやりだったけど、松嶋菜々子が適任だと思ったわ。
加賀の推理でいろんなことが繋がる。
そして博美の過去も明らかになる。
博美は母親の厚子の元を訪れる。四半世紀ぶりに対面する母と娘。最初は気づかなかった母親も娘だと気づく。
博美は母親を許さないと父親の地獄を告げる。
父親がまさか小日向文世だとは思わなかった。だって、焼死体の似顔絵と似ても似つかないわけで。
父親は逃げた母親が作った借金の取り立てで暴力を受けていた。そして娘、博美にまで手を出そうとする取り立て屋。
この時代を演じた桜田ひよりがとても良い。
悲しさ、怖さを本当に感じる。
夜逃げをする親子。
父親は自殺しようと能登に向かう。
そこに音尾琢真演じる原発従事者と会う。音尾は博美にバイトを持ちかける。
父親がもうお金がないことを知る博美は恐る恐るバイトに応じる。が、そこで殺してしまう。
父親は自分がその身代わりで生きていくことを決心する。
そして自分は自殺したことにするようにと博美に言い聞かせる。
このときの悲しさの演技はすごかった。
桜田ひよりって可愛いイメージだったから「誰?」くらい。
そして父と娘は離れ離れになりながらも気にしながら生きていく。
博美はその後担任であった苗村と不倫の関係となる。
苗村が及川光博でそれを老いさせてるところが驚いた。ミッチーが〜。
最近、ミッチーこんな役多くない?
苗村の子供を宿した博美は女優として役をもらえたところだったと堕胎する。
それに怒る苗村。
最終的には博美と密会しているのを見掛け父親に声をかける。父親は苗村も殺してしまう。
そして加賀はやっと突き止める。
なぜ自分がここに組み込まれているのか?
そう、そこには「博美」の行動があったからであった。
まず、なぜ加賀の住所に母親の荷物の引取の連絡が来たのか?
それは誰が調べたのか。
加賀の母親はうつ病の状態であり10歳の恭一郎まで道連れにしてしまう自分が怖くなり仙台へと向かう。
自分を知ってる人がいないところに行きたい。
そこで「セブン」というスナックで働いている中で博美の父親と仲良くなる。
博美は父親が好きになった女性の子供がどんな人物なのか知りたかったのだと思う。
だから仕事で加賀と共通点を持ったということだった。
親は「見守っている」という感情をいつでも持ち、子供は親のことを「知りたい」と思う。
それが加賀と博美の共通点だったのかもしれない。
そして加賀恭一郎がなぜ日本橋署にこだわったのか。
母親を知る博美の父親を人知れず探していたのだ。
博美の父親は自分の存在が博美にとってのパンドラの箱であることを認識しており、自分を知っている人間を殺していく。
それが道子だった。
しかし、道子を殺した父親はもう逃げるのは嫌だと自殺をする。
それを察知した博美は焼身自殺しようとする父親に焼身自殺は嫌だと言われていたことを思い出し、クビを締める。
全てがお互いを思いやるが上のこと。
悲しさしか残らない。
これで加賀恭一郎が見られなくなってしまうのか?
それが悲しい。
初日初回の上映。まぁ7割くらいの入りかな。
それでもエンディングのJUJUの「東京」がとてもいい。
誰も席を立たない。
そんな映画。
余韻まで楽しめる。
新参者に登場していた杏や香川照之なんかも登場。あ、恵俊彰もいた。
良かった。
また加賀恭一郎と会いたい。