力のあるところに流れるもの
昨日を持って実力で「五段」に昇段した藤井五段。
あの年齢でマスコミに追われることをどう思っているのだろう。
それでも彼の「将棋」にはいろいろなタイミングが関わっているように思う。
3段昇段時の半年間から
3段リーグに上がるタイミングが1ヶ月遅くて半年間時間が空いたという話はいろいろな書物に書かれている。
それでもその時間があったから、3段リーグを1期で抜け、C級2組も1期で抜けられたのではないだろうかと思ってしまう。
全てが過ぎたから言えること。
3段リーグに上がったばかりの藤井五段のことを先日、山崎八段が解説の時にお話していたことがあった。
その頃、山崎八段は奨励会の幹事をされていたということで三段リーグに関わりが深かったようだ。
三段リーグに上がったばかりの藤井少年にそこまでの強さは感じてなかったと言っていた。
でも、終わる頃になると他の三段リーグの上に上がれないけど強い猛者が強い棋士として藤井少年の名前をあげていたと。
ライバルに名前をあげられる存在になっていたことに驚いたとおっしゃっていた。
そして、10月に4段になりプロになった。
そこから初めての対局は12月24日クリスマスプレゼントのような対局。
しかも相手は加藤一二三九段。
長年、最年少記録を保持し、77歳まで現役というとんでもない記録の持ち主。
最年少記録は破られたけど、最年長記録は破ることが出来るのかって思う。
これ以上ない相手との対局。
この頃はまだAbemaTVに将棋チャンネルはなかったことを昨日知る。
2月1日で1周年だったらしい。
それでも過去映像としてかなりの記者が入っていたことがわかる。
まぁ最年少棋士対最年長棋士ということで話題性は十分だったのだろう。
私はその頃はまだ藤井五段の名前も加藤一二三九段の名前も知らない。
下世話な不正事件についての記事が中吊りにあったなぁくらいの記憶があるくらい。
そう、あの頃、将棋連盟はかなり激震が走っていたはずなんだ。
でも、この二人の対局で未来になった。
淀んでいた空気が一気になくなった。
年が明けて、2月1日にAbemaTVで「将棋チャンネル」が開局し、企画として藤井五段の「炎の七番勝負」が計画される。
その頃はまだ10対局もしてなかったのだろうけど、久しぶりの中学生棋士ということだけで話題性は十分だったのだろう。
企画が進む中で、彼は負けない。
負けてないから企画があったと言うことではないことは本に書いてある。
そうそうたるメンバーが顔を揃える。
若手有望、ちょっと上のくせ者、ベテラン。
ラスボスとして羽生竜王(当時三冠)
新人棋士が非公開とは言え、対局できる人はどのくらい居るのだろう?
現在の四段で自力で対局出来た人はどのくらい居るのだろう?
それが非公式という場面ではあるがお膳立てされる。
しかも彼は周囲の予想をはるかに超える結果を残してしまう。
6勝1敗
まだ藤井五段を研究するまでの資料はなかったのだろう。
けど、負けるはずがないと思っていたはずだ。
GW直前になり、藤井五段の名前がワイドショーに出てくるようになる。
「羽生さんに勝った中学生」
これだけで興味を持つには十分だった。
「誰?」
調べる。藤井五段の最初の頃は強すぎるから「アスペルガー」なんじゃないかとかって情報が上位だった。
そのくらい秀でていたということなのだろう。
だから私の最初の印象は特殊能力の男の子だった。
そしてGW明けになるとワイドショーでは「勝負メシ」で盛り上げる。
それまで「将棋」なんて知らなかった人に普通に将棋の対局を見せていてもわからなかっただろう。
ミヤネ屋でリポーターが出前の人にインタビューするわ、自分で試食するわ、「棋士」ということを知る前に「勝負メシ」の方から入った感じがする。
そして、いろいろな先輩棋士が中学生棋士のすごさを解説する。
誰が誰だかわからないけど、「棋士」という職業=暗いというか、東大一直線の人って普通の会話に面白みがなかったりするのと同じで、面白みのない集団だと勝手に思っていたのだけど、これが面白い。
調べ始める。
AbemaTVで無料で見られることを知る。
これが大きかった。
モバイル中継だけ見ていたところでここまでハマることはなかったと思う。
AbemaTVはこれでもか!と藤井五段の対局を全部中継したよね?ってくらい中継してくれた。
そこに先輩棋士が「妬みとかないの?」と下世話な勘ぐりの中で見ているが、「別物」と考えている姿勢、また強さにただただ感動している様を見た。
唯一、勝又六段、藤森五段の「あの子」発言で本音が聞けた感じでちょっと安心した。
あれよあれよと連勝し、週に2回も見られる。
仕事どころじゃなかったわ。
棋譜というものを知る。
解説ツールというものを知る。
藤井五段とともに将棋の世界を本当に知った。
ミーハーかもしれないけど、今はとても感謝かな。
藤井五段という存在から知った世界だけど、他の棋士も居て全ての人が「プロ」という自覚を持っているということに共感を持てる。
解説ひとつとってもしゃべりを勉強しているんだろうなって思う。
ただ棋譜を暗号のように言われたところで視聴者は置いていかれる。
大盤で動かしながら、自分のプライベートなことも話し、身近さを感じる。
順位戦は藤井五段にとってはやっぱり負けられないものという位置づけだったのだと思う。
そろそろデビュー1年ちょっと対局もたくさんしているからきっとプロ同士だったら得意不得意の探り合いで探られているのだろうと思う。
それでも真っ向受けている姿勢がいいなと思う。
たまに思うのは、彼はどういう研究をしているのだろう?ということ。
対局相手の研究をしているのだろうか?
自分を磨くことを主にしていて相手の得意なことややってきそうなことに対しての対応をしているのか?とちょっと思うことがある。
昨日の対局とその前の対局はどこまで受ける?な感じでちょっと見慣れてきた素人は何も知らないから「なんで?」と思うばかりで。
終われば勝っている。
「果報は寝て待て」
ほんとそんな感じだったのかもしれない。
信じられるのは解析ツールのBonanzaだけって感じで1手1手見ていて余計にイライラして。
自分のことじゃないのにね。
それでも昇級、昇段したことできっと一安心といったところだろうか。
そして誰も想像していなかった羽生竜王との準決勝。
まさか朝日杯、早指しとは言えベテラン、タイトル保持者相手に勝ち上がるなんて思った人は居ないのだろう。
本人はウチに秘めたなんとかで狙っていたのかしら?
普通、いい流れは最初だけっていうのがあるけど、彼は目標が自分の中にあってきっと一般人とは違う景色を見たがっっているのだと思う。
だから、周囲もそういう流れを起こす。
2月17日がどんな日になるか。
これで負けたところで彼の強さは変わらない。
そして、今年中に六段になることも変わらないのではないだろうか?
五段になった最初の対局は来週月曜日。
白星スタートできるかしら?