家族だけど個々の責任
岸部一徳さん主演作ってことで興味を持ち、予告はちょっと面白いのかと思ったから行ってみたのだけど。
現代社会のどこのお家にも潜んでいる問題なんだろうな。
家族の再生?
家族構成が兄、妹に両親という4人。
でも兄の年齢と娘の年齢差がわからない。
娘役の富美の木竜麻生(きりゅうまい)は女子大生という背景はわかるが、兄浩一役の加瀬亮はいくつの設定なんだ?
木竜麻生と加瀬亮は20歳の年齢差がある。
そして父親役の岸部一徳さん71歳、母親役の原日出子さん59歳。
なのでちょっと違和感がありながらの鑑賞。
浩一のシーンから。薄ぼんやりとした部屋。ようやく部屋の中なんだと思うくらいの暗さ。
そこにきっとまだよくわからない人物のオーラのようなものがあるのだろう。
加瀬亮の横顔。もう44歳。SPECの頃のトゲトゲしい雰囲気はなくなり、なんかおじさん感が漂ってきている。
最近、発声している演技を見てない気がするのは気のせいか?
私が見ている作品が「3月のライオン」の宗谷冬司役だったり、「モリのいる場所」の藤田武役だったりで、そこまでセリフがあるって感じではなく、存在で演じている感じが多いイメージ。
浩一もそう。
開始早々、自殺。
リビングでは母親が昼食の準備をしている。
ラジオを聴きながら陽気な雰囲気。お昼の準備をして浩一の部屋へ行く。
「一緒に食べない?」
応答のない部屋。中に入るところで途切れる。
そして夜。妹が帰宅。電気のついていないことを不思議に思い、母を探す。
結局、一番気の毒なのは妹だとほんと思ってたわ。
妹の見た光景、母が包丁を手に倒れている。腕に切り傷が多数あり、血が流れている。
その母は意識が戻らずに眠った状態になっていた。
何も家事をしてなかった父親は洗濯もままならない。
洗剤を間違えて洗濯のりいれるってすごいな。
父親は息子の死の受け止めのために「男爵」というソープランドへ行く。
しかし、初体験の父親は受付と女性に払うチップに納得がいかずに娘に連絡が行く。
父親を引き取りに行く娘。大学生の娘も初めての場所に戸惑う。
「こんな時に何してるの」
冷たく言う娘に何も言えない父親。
なんかね、こういうひとつひとつの積み重ねなんじゃないかって思うんだよね。
家族って括りで共同生活を分担しながらしなきゃだけどさ、親は子供をどこまで育てたらいいの?
パンダのシャンシャンなんて1年半で親離れだよ?
それでもこの鈴木家は浩一の引きこもりを何も出来ずに居た。
引きこもりになるのはきっといろんな問題があるのだろうけど、それは周りの助けも必要だろうけど、それは親なの?
家族という甘えの図式の中で自立出来ずに社会生活が出来なかったという妹の見立て。
それでも親は自分たちを責め、本人もどこからやり直して良いのか?やり直せるのかを模索して苦しんでいるってことなのだろう。
49日。
母親の意識は戻らないまま、意識の戻らない母親の今後も考えることに。
父親の妹役が岸本加世子。母親の弟役が大森南朋。
うーん、理想的な一般的な親戚像なのだろう。
ちゃきちゃきの義妹にうだつの上がらない義弟。
まぁ突然そこは意識が戻るのだけど、49日も声を出していないから声がでない。
けど、しゃべる。
その中で気づく。「浩一は?」
あの日の記憶が欠如しているらしい。
あまりにもショックな出来事を人間はうまく処理してくれる。
そこでとっさに娘は母を気遣って言う。
「お兄ちゃん、今アルゼンチンでおじさんの仕事手伝ってる」
母親も兼ねてから自分の弟に息子の事を頼んでいたこともあり、信じてしまう。
そこから娘と夫の母に対する優しい嘘が始まる。
娘は母のために兄になって手紙を書く。それを現地のアルゼンチンに居る他の人間が清書して投函していた。
そんなことが続く。
娘の心は潰されていく。
兄の遺体を見て、しかも警察にも連絡をして確認作業までさせられている。
それをフォローするべき両親じゃない。母の頭の中は常に「浩一」だ。
母親の甘やかしが兄を引きこもりにしたのか?母は兄がいつか部屋から出てくることを信じていた。
しかし
現実はまるで違っていた。
娘は一人、同じ境遇を語り合う場へと出向く。ボランティアの方一人に家族に突然去られた境遇の人々。
話すことで楽になる。
自分だけではないと思える。
一人で発散することも出来ずにいるよりきっと少しでも救われるのだろう。
そこに居る日比野という女性。14歳の娘が自宅の風呂場でリストカットして自殺してしまった。
しかし娘の苦しみなどには気づかず、学校側もイジメの実態はなかったという。
14歳。
何が彼女の人生にあったのだろう?それでもそのくらいの年齢の子供は難しい。いじめられていることをSOSする能力が低下してるんじゃないかって思うほどにいろんなことを考えてしまいこみ、自分で自分を処理してしまう。
夫が電車に飛び込んで賠償金まで請求されている米山。他人にも意見して同調するが、ボランティアにはちょっと場に馴染んでないと思われている。
それを日比野は誤解だということを言う。
タクシーで来るから他の人と比べたら裕福で悲しみの質が違うんじゃないかと言うことには「電車には乗れない」と教える。夫が電車に飛び込んだってことはそれほどのこと。他人にはわからない思いがある。
会社を経営していた夫とは言え、電車に飛び込んだ損害賠償は多額だろう。
富美はなかなか自分のことを話せずにいた。
母に対して嘘を重ねる日々。
母は娘にお兄ちゃんに手紙書かないの?とか謝ればいいのにと勝手なことを言う。
そしてとうとうバレる。
母親が兄のバースデーを祝おうとする。
そのケーキの火を妹に消さそうとしたから。
だいたいね、大の男にバースデーケーキを買ってきて「祝ってれば出てくる」ってずっと出てくるまで歌う母親ってどうよ?
自立も出来なかった息子でもあるし、ほっといてあげたらと思う感じもある。
富美はたまらずに兄がアルゼンチンにはいないと言い出す。そこに清書をしていた北別府までが乱入することになる。
母親もようやく思い出す。
あの時にあったことを。
首を吊る紐を切ろうと包丁で頑張るが、切れずに自分の腕を傷つけただけだった。
ようやく娘の苦しみに少しだけ気づけたのか?
富美はようやく兄に手紙を書き、話すことができる。
自分が兄に「生きてて意味あるの?死んじゃえば?」と言ったことへの後悔も。
高校生の富美。社会人なのに引きこもりの兄。母親は兄のことにしか興味がない。
そんな人に興味なんてないだろうし、そんな言葉で人が簡単に死んでしまうなんて思わない。
そこまで追い詰めていたものは何だったのだろう?
父親も病院へ連れ出すことには成功したが運転中の車から突然飛び降りてしまった浩一。発狂乱になった息子をどうすることもできなかった父親の苦悩。
父親はソープランドでイブという女性と話させてくれと頼む。
息子はイブという女性を受取人とした保険金をかけていた。
妹とイブに残した保険金。
富美は困る。なぜ私に?
兄のことがわからない。
エンディングでイブの正体がわかり家族で向かうところで終わり。
うーん、長いのよ。2時間半もある映画。
まぁ私の嫌いな家族像過ぎてイライラしてた。特に母親。
なぜ自分の生きがいを息子にしちゃう?
子離れの必要性、親離れの必要性をほんと感じた。
岸部一徳さんのお父さん。
なんかだめなお父さんなんだよね。なぜ?
でも、岸部一徳さん好きだからなぁ〜。