【映画 こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話】感想。大泉洋初めキャスティングが見事

健常者と身体障害者と

鹿野ボランティア。実話を元にしていると言うことだけど、ボランティアの域を遥かに超えるスケールの集合体。

ボランティアを始めるときの気持ちと続ける気持ちと辞めるときの気持ちと。

それぞれがあるよね。って思う。

大泉洋が動ける身体を動かさない、動ける部分だけで表現する。

まぁ大泉洋、きっとしゃべれたらいいのかもしれないけど。

鹿野さんもそんな人だったらしいけど。

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助けてもらう勇気

「助けてください」と言うことは決して簡単ではない。

それは健常者でも身体障害者でも同じじゃないだろうか?

人は自分の中のちっぽけなプライドが邪魔をして「助けてください」と言えずに我慢してしまう生き物だ。

鹿野さんという人はその考えを根本から疑問視して病院から出て自立をする。

しかも全てをボランティアに託すという。

1994年の1年間の話だったのか?

11歳で診断を受けてそこからは療養施設で過ごしていたらしい。が、そこでは自分と同じ病気で進行の早い人が死んでいくのを目の当たりにしなければならない。

次は・・・と不安にしかならないだろう。

自立する。

それは一般的に考えてしまうと家族がつきっきりで手助けをしなければならないとなる。

鹿野さんは違う。

自らボランティアを募集する。

1992年くらいか。バブルがはじけた札幌にはまだ人情があったと思ってしまった。

強い意思。

遠慮はしない。

それは相手を慮るということがない、身体障害者という武器を盾にしてボランティアを振り回す。

振り回されるボランティアの人たちはなぜそれでも自分の時間を犠牲にしてまでも鹿野さんを助けることができていたのだろう?

そこには鹿野さんの生き方や考え方に大きな影響を受けた若い人が居た。

私と同年代くらいの人たちだろうか?

今の時代に鹿野さんは存在できるのだろうか?

そんなことを考えてしまった。

身体障害者が自分の考えで生活すること、親の勇気もあるだろう。

大泉洋の鹿野さんもだけど、綾戸智恵のお母さんは適役だ。

なぜなら暗くなりがちの物語でお母さんはかなり可愛そうな役回りだったけど、根っからの明るさがあって沈まない。

大阪弁を一生懸命北海道弁にして頑張っている姿もだけど愛らしく感じた。

母親の苦悩を子供なりに考える。

母親は病気になった我が子に対して「健康に産んであげられなくて」と責めてしまう。

本当にそうなのか?

そもそも、この世に生を受けることが奇跡なわけで、確かに五体満足で生活させてもらっている私が言うのはおかしいけど、病気になるのは母親のせいではない。

出産という自分の命と引き換えにしたような行為をしている人をなぜ責める風潮があるんだろう?

息子は母親に甘えたいけど、甘えてしまえば母親の人生がなくなることを知っている。

自分が甘えてしまえば母親は自分の人生と引き換えに子供のために生きてしまう。今、この瞬間もそんな親子がたくさんいる。

子供がボランティアを募集して自分を邪険にする。

親としてどんな気持ちだっただろう?

子供の強い意思を親もしっかりと認めたことで成り立ったことだったのだろうと思う。

この時代になり身体障害者を持つ親以外にも自分の親の介護で自分の人生がなくなっている人も少なくない。

家族介護はしょうがないのだろうか?

若い人が減ってきている。ボランティアを求めたい人の数は増えている。

この映画で介護という枠組みを根本的に変えるような何かが起こればいいなと思う。

大泉洋の演技が本当にすごかった。

最後はほんとダイエットの効果がはっきりと出て細くなっていっていた。

声が出せない。

呼吸ができない。

身体が動かせない。

できることをしない演技。自然に見える。

本当に動かいんじゃないか?

崩れ落ちる演技。

とっさに身を守ってしまいそうだが、自然だ。

泣けるとかはないが、やっぱり影響は受ける。

影響を受ける役が三浦春馬と高畑充希だけど、高畑充希演じる美咲はある意味、普通の人の感覚だ。

三浦春馬演じる田中くんの彼女なんだけど、ボランティア優先でなかなかデートができずに勝手に鹿野さんのところへ行く。

そのままボランティアにされてしまう。

そこでちゃんと「僕の彼女です」と言えない田中くんってどうよ?って感じですすむ。

自分の彼女だとも言えずに変に忖度してしまう田中くん。

それって気遣いなんだろうか?

結局、「鹿野さんって生きるために一生懸命なんです」って言いながらも、自分が居なきゃって気持ちが純粋な感じがしない。

そのうち自分でも気づき医者になるのを辞めると大学を辞める。

医大生と合コンするために教育大学生と嘘をついて付き合い初めた美咲。

体裁が必要な田中くんには許せないことだったようで二人の間はぎくしゃくする。

元気のない美咲に鹿野さんは「嘘を本当にしちゃえばいい」と教育大学を受けて先生になることを勧める。

それを素直に受けて勉強をする美咲もすごいなって思うけど。

次第に美咲は鹿野さんに感銘していく。

まぁ結ばれちゃうのかと思ったけど、田中くんのことを忘れきれない。

田中くんがね、小さい男からだんだんと成長する。

それを見守る美咲。

鹿野さんはきっと最後の最後まで懸命だったんだろうな。

人工呼吸器をつけて7年も生きたのだから。

大泉洋の数々の作品の中でも一番印象に残る作品になったと思う。

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