いろいろなタッグ
是枝監督の作品。
「そして父になる」で福山雅治とともに第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。
その福山雅治と再タッグ。
「海街Dialy」は第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞。広瀬すずが新人賞を総なめ。
そんな関係性の人がまた集結した。
第74回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品作品
タイミングの良い公開。
ヴェネチア映画祭の熱量を日々テレビで報道され、期待は高まる。
最初に観た予告。
役所広司さんの容疑者ぶりが深い。
福山雅治がすごいインテリ弁護士役という雰囲気。
容疑者の一言一言が守ってもらいたいという雰囲気はなく、弁護士をあてにしていない感じ。
予告は容疑者と接見している弁護士の部分のみ。
裏に何があるのか?
広瀬すず、斉藤由貴はどういう風に関わってくるのか?
興味しかない。
いよいよ公開だ。
感想という名のネタバレになってしまうかもしれない。
「この世の中に本当のことなんてない」
「命の選別は誰がする」
この2つが根底にあるテーマなんだと思う。
役所広司演じる三隅は三度目の殺人の容疑者として収監されている。
そこに真実よりも依頼人の利益を優先し、裁判をビジネスとして考える福山雅治演じる重盛が担当することになる。
当初担当していた吉田鋼太郎演じる摂津から廻ってきた仕事。
三隅は弁護士に対しても二転三転する供述。
何を信じていいのか。三隅は何を求めているのか。
三隅は過去に殺人事件で、橋爪功演じる重盛の父に無期懲役刑をくだされている。
重盛の父は弁護士の息子に「殺人をする側としない側には深い溝がある」ことその溝を乗り越えることをする人間がいることを諭す。
三隅の供述が二転三転する中で、様々なことが浮かび上がってくる。
「強盗殺人事件なのか?」
三隅からは何ひとつ出てこない「なぜ?」な部分。
それをマスコミが週刊誌に妻から頼まれた保険金殺人的なものに変貌していく。
斉藤由貴演じる妻。。。
なんかなぁ〜。斉藤由貴がリアル過ぎなんだけど。
広瀬すず演じる娘の咲江も何かを言いたいことを秘める。
日本の司法の歪みが根底にある。
裁判がビジネス化し、量刑も輪切りになっている。
殺人事件ひとつとっても、怨恨と金目当てでは心象が変わる。
殺人事件は同じでしょ。
これが海外で評価を受ける。
どこが?
なにが?
日本の死刑制度を海外ではどう捉えられるんだろう?
1回目の公判後、突然咲江が真実を打ち明ける。
「お父さんに14から性的暴行を受けていた」
信じられない真実。
そのことを三隅に伝えたこと。
「お父さんを殺して欲しい」
思ってたことが三隅に伝わったことがわかったと言い切る咲江。
公判で言いたいと言う。
重盛は止める。
検察側はそれらの証拠のために咲江のことを根掘り葉掘り知られたくないことまで明らかにしてしまうことも。
同じ年頃の娘を持つ重盛。
必死に止める。
三隅のガラスの向こうの顔が変わってくる。
重盛と手と手を合わせたことで重盛のことを理解したのか、心を開いたことがわかる。
咲江が三隅と身体の関係があったかどうかは明らかではない。
それでも触れただけで伝わったんじゃないかと観ている側は理解する。
重盛も変わる。
裁判はビジネスとしてしか考えたなかったことが言葉の節々からわかる。
まだ理想に燃える満島真之介演じる川島に「そうじゃない」と語る。
川島は「生まれてこなかった方がいい人間なんていない」と言い切る。
重盛は「そんなことはない。人間は理不尽に命を絶たれることがあるのだから」と。
誰がそれを裁けるのか?
それは裁判官のみが出来ることなのか?
三隅の頭の中には殺した咲江の父に対する裁きという感情はなかったのだろうか?
咲江の告白を三隅に打ち明ける。
そこから話がまた変わる。
「オレは河原にも行ってないし、殺してない。今までが嘘だ」と。
困惑する重盛。
裁判が始まり、量刑のみが焦点だったはずがやったやってないということを入れることは、量刑が重くなるということだけだということのようだ。
次の公判の場で「オレはやってない」と言い出す三隅。
検察側は公判のやり直しを言い出すが、結局は裁判費用やノルマなどなど日本の抱える司法という現場の現実ではそのまま「罪を認めずにいて、反省してない」ということで、「死刑」の求刑通りとなる。
無罪主張を認めた重盛。
こうなることがわかっていながら認めた重盛にはある思いがあった。
それは三隅がやってないということにすることで、咲江の主張を言い出せなくする狙いがあったのではないかというもの。
死刑宣告の後の接見。
それを質問する重盛に対し、三隅は冷たく言い放つ。
「人殺しの言うことなんて聞いちゃいけない」
三度目の殺人は・・・
重盛の心を殺したということなのか?
答えはなかった。
もう一度見ないとわからない。
三度目の殺人は・・・
最初に妻が疑われたのは、夫と娘のことを見てみないフリをしている妻に罪を負わせようとしたのか?
三隅は本当に殺人をしているんだよね?
と最後は自分がわからなくなる。
それでも、演技派の人間しか出てない作品。
川島の正義感がいい。
どうか司法の当たり前に染まらないでと思うくらい。
それでも現実を知り、それに抗うことが無意味なことを知り、裁判をビジネスとして捉えてしまうのだろう。
この作品が海外でどう評価されるのか?
日本人としてガラガラの初回上映。
日本人でも捉え方が難しい作品。
でも、半年後の日本アカデミー賞の作品賞とか助演女優賞はあるなと思うけど。
日本の司法の現実はきっとこんな感じなんだろうな。
食品偽装という社会問題も根底にはあって、ほんと海外で日本がどう見られちゃうの?が知りたいわ。