【小説 虚ろな十字架】枕元に置きっぱなしでやっと読み終わった

3年ちょっと前の出版

まだまだ読んでない東野圭吾作品がある。

この本も買ってから多分1年以上経っててどうして読んでなかったのかわからないけど、ちょっとタイトルからして重そうだったからだな。

読み出せば4時間

ある程度長編でも東野圭吾作品は読みやすいから4時間もあれば読み終わる。

この作品は長編サスペンスになるのだろうけど、重い。

プロローグは中学生の二人が出会うことから始まるけど、第1章からは突然悲劇が始まる。

ある幸せな家族の中で突然、娘が殺されてしまう。

そこからストーリーが展開していく。

家族であった二人は犯人の「死刑」に向けてともに戦う。

でも、「死刑」をとっても二人の心は浮かばれない。

お互いの存在が「幸せ」を思い出すために苦痛になってしまい離婚してしまう。

そして数年した頃に、夫であった中原に電話がくる。

娘の殺害の時の担当の刑事からだった。

それは・・・

妻であった小夜子が殺されたというものだった。

そこから2つの話が平行に進んでいく。

大学病院に勤務する仁科史也のストーリーが始まる。

史也は器量のないお嫁さんとの離婚を親と妹に迫られる。

史也は頑として聞かない。

史也がなぜ自分の子供ではない子供を育てているのか理解できない親。

中原は小夜子の死によって小夜子の裁判について小夜子の親から相談を受ける。

小夜子がしていたライターという仕事について知る中で、彼女が離婚後にどう考えていたのかを知る。

日本の裁判や刑務所などについて考えていた。

彼女の最後の記事は万引き依存症に対するものだった。

しかし、この記事が彼女が死んでしまうものとなってしまう。

最初は何のつながりも見えないそれぞれの事象。

しかし、それは加害者の娘の夫と万引き依存症の対象女性の二人に接点があることに気づく中原。

中原と小夜子。

小夜子の正義感は本当に必要だったのだろうか?

万引き依存症の井口沙織。一番最初に登場する名前だ。

そう、プロローグの二人こそ井口沙織と仁科史也だった。

二人の付き合いはある事件まで続く。

それは井口沙織が妊娠してしまうこと。まだ中学3年生で親にも気づかれなかった沙織は自宅で出産する。

出産してもすぐに殺害してしまう二人。

そして二人は青木ヶ原樹海に死体を埋めに行くのだった。

しかし二人はその後半年で別れてしまう。

沙織は生きていることが罪だと思い、万引きを繰り返す。

史也は贖罪のために小児科の医師となり、妊娠して自殺をしようとしていた花恵を救い、結婚して自分の子供として育てることとした。

小夜子が沙織の相談に乗る中で、沙織の痛みを救うためには自分の罪を償うことが大切だと言う。

沙織は自分だけで自首することは出来ないということで小夜子が史也を探す。

そして史也の所にも行き、自首をすすめる。

改めて史也の自宅を訪ねる小夜子。

そこに居たのが、花恵の父親だった。

花恵の父親は今までまともなことをしてこなかったが、21年も前のことで捕まってしまう婿のために小夜子を殺してしまう。

娘と孫のために。

人間とはなんと愚かな生き物なんだろうと思ってしまう。

中学生の妊娠。

日本の性教育の未熟さが一番の問題なんだと思う。

先進国なのか?と思うようなものだろう。

今はどうなんだろう?

今の子の性は昔よりも早い気がする。

自分なんかは田舎だったし、情報を得るものなんて姉の漫画とかか?

「3年B組金八先生」でいきなり杉田かおるが中学3年で妊娠してってことがすごいことだということはわかったけど、それがどうすごいのかなんて知らなかった。

それでも案外、そんな人間は多いんだってことを知るわけで。

高校の時にも妊娠して中退した子なんて何人か居たみたいだし。

まず最初の悲劇は妊娠してしまったこと。

それを正しくなくてもいいけど救う大人が居なかったこと。

それを子供の浅はかさで突き進み、心に大きなキズとして大人になってしまっていること。

それを小説という題材で取り上げてくれたことはとてもいいのだと思う。

これをドラマ化して欲しい。

そして多くの人の問題意識として提起して欲しい。

この本の言いたいことはたくさんありすぎなんだけどね。

裁判制度 死刑制度 死刑廃止論

「死刑は無力」

だからと言って死刑にしなくていいってことではない。

死刑に値するような罪を犯した人間が刑務所で刑期を終えたところでどう変わる?

変わりたくても変えさせてもらえない日本の実情があるだろう。

一度罪を犯した人間に対して、日本人は寛容ではない。

とことんまで追い詰める。

結局は刑務所にしか居場所がなくなる。

この本で伝えたいことはどういうことだったのだろう?

再犯での子供を殺害された夫婦のやりきれない気持ち。

死刑を勝ち取っても晴れない気持ち。

気持ちなんだろうな。

難しい本。

映画よりドラマで丁寧にやってほしい。

子供が殺されなければ、小夜子も殺されることはなく幸せが続くはずだったのだろう。

不幸の連鎖を丁寧に描いて欲しい。

虚ろな十字架

虚ろな十字架