ただのコメディかと思ったのだけど
他の映画を観に行った時に見た予告では、意味がわからないコメディ映画だと思って、正直、その場では「これはないな」って思ってた。
でも、行ってみて良かったと思う。
人魚姫の映画版?
物語は回顧もの。入院していた老人の加藤剛が看護師の居石橋杏奈演じる天音に自分が書いた脚本を見せてほしいと言われることから始まる。
ロマンス劇場という昔ながらの映画館。
館主が榎本明演じる本多。そこに助監督をしている坂口健太郎演じる牧野健司は通いつめている。
健司のお目当てはお蔵入りになっていた昔のフィルムを一人で鑑賞すること。
健司は「お転婆娘と・・・」というモノクロ映画にはまっていた。
そしてその主人公の綾瀬はるか演じるモノクロ映画の中のお姫様、美雪に想いを寄せる。
ある日、いつもと同じように一人鑑賞をしていると、突然雷が落ち、映画の中から、主人公の美雪が飛び出してくるという驚きの展開から始まる。
美雪は映画の中のキャラクターのまま飛び出てきた。
美雪という役を演じているその人じゃなくてお姫様の役としての美雪。
なので、健司をすぐに「お前は今日から私の下僕だ」と言い出す。
でも、憧れていた女性からこんなことを言われ、もともとお人好し要素のありありの健司はすぐに言う通りにしてしまう。
モノクロの世界しか知らなかった美雪。
カラーの中にモノクロの美雪はかなり目立つが持っている要素が「お姫様」だから、目立つとかそういう感覚はない。
健司に街を案内しろ!と言うが、健司は仕事だから無理だと言うと健司の撮影現場が見たいと言う。
作られた世界に居た自分。作る世界を見たいという感覚なんだろうか。
そこに行くまで荷台にお布団を被るという感じ。昭和35年当時ってことらしいので、まだまだ不便だったよね。
映画の撮影現場ってことでメイク室には衣装やらメイク道具があり、モノクロの美雪からカラーの美雪へ変身する。
変身した美雪の行動は幼稚園児のようで大変だ。
幼稚園児の方がまだ立ち止まるだろうってところも興味のあるものへ次々と移ってしまう。振り回される健司。
助監督なんてまだ雑用係でしかも要領の悪い健司は謝り、代わりに殴られ気持ちが凹む。
撮影現場には北村一輝演じる俊籐龍之介が「ハンサムガイ」シリーズの主演を務める看板スターをしている。
北村一輝キャラはこういうのもいいなと。ナルシストぶりがたまらない。
先週は半グレだったのだけど(羊の木)。
俊籐は美雪の綺麗さに声を掛けるが、相手がスターだろうとお構いなしの美雪。
俊籐が「よく映画から飛び出してきたようなと言われる」と言う言葉を真に受けて「私以外にもいるのか」と返すが、相手には伝わらない。
昔の撮影現場ってほんとこんな感じだったのかしら?
美雪は本物のダイナマイトに興味を持ち、持ち歩くが途中で放り出す。それを今度は健司が準備することになっていたスモークに紛れ込み、俊籐はダイナマイトで吹き飛ばされる。
その聞き取りをしていたのが今野浩喜の刑事。前日には美雪に叩き倒されてたりして。踏んだり蹴ったりの役だ。
映画の撮影会社の社長令嬢の塔子役の本田翼。お嬢様役ねぇ〜。うーんな感じ。
私としてはハガレンのウィンリィ・ロックベルが好きかもしれない。
塔子は健司のことを好きになっていた。
そこで父親に頼んで若手にチャンスをということで、いい脚本が出来たら監督をさせるというものだった。
俄然頑張る健司と中尾明慶演じる山中伸太郎。山中は塔子に片想いで、関係が複雑だったりする。
健司は監督になりたかったのにいざそのチャンスが来たら何を書いていいのかわからないと、ロマンス劇場の本多を尋ねる。
本多はチャップリンの手記の言葉などを教える。
健司はその言葉に自分の書きたかったものを認識する。
健司は美雪との出会いについて書き始める。
集中する健司に美雪はつまらないとサクマドロップスを投げる。
サクマドロップスがこれでまたクローズアップされたら面白いのに。
やっぱり懐かしいよね。
まだモノクロの頃に最初に美雪がサクマドロップスを食べるシーンが印象的だったな。
モノクロの美雪が真っ赤なドロップを口に入れるの。
キレイよ。
健司は、美雪にシナリオを書くためにお手伝いをしてくださいとお願いする。
そして健司はシナリオにしたい情景を二人で行って写真を撮ったりする。
二人の気持ちはお互いに惹かれ合っていくが、惹かれれば惹かれるだけ険しくなっていく関係。
健司はラストシーンを書くために美雪をホタルの居る場所へと連れて行く。
そこで健司は「いつまでも隣に居てほしい」と指輪を渡そうとする。
しかし、美雪は断る。
自分は人とふれあうことが出来ない
ふれあうと自分はこの世にいられない。
そう、人魚姫が人間になったときには言葉を失ったのだけど、美雪は人とのふれあいをすることが出来ないのだった。
ふれあえない関係。
迷う健司。
隣にいるだけでと言っておきながら、温もりも求めてしまう。
それはしょうがないことでしょ。なんか切ない恋を見ていてほんと悲しくなった。
健司のことを思っての美雪の行動。
そして美雪のことを思うからこそ、美雪に対してよそよそしくなってしまう健司。
触ったら居なくなる相手に対して居なくなってほしくない気持ちって困るよね。
手を貸したくても貸せない。それが迷惑なんだから。
美雪はそんな健司の態度を見ていることが辛いと出ていく。
追うことも出来ない健司。
美雪はロマンス劇場で居候することになる。
館主の本多も昔同じ体験をしていた。しかし、相手の女性は居なくなってしまった。戻ってしまったのかどうなのかはわからないと言う。
俊籐に美雪のことを聞く健司。健司の前から居なくなる前に俊籐に「どうしたら元の世界に戻れるのか?」と聞いたという。
まぁ「映画の世界から出てきた」と言ってたわけで。
ポジティブナルシストは他人のそんな言動を心配しながらも訝しくは思わないことがメリットで。
その言葉で美雪がロマンス劇場に居ることに気づく健司。
健司は美雪にやっぱり一緒にいたいと伝える。
そして触れ合う・・・
ところで脚本は終わっていた。
天音は続きがどうしても知りたいと老人になった健司に依頼をする。
そこに変わらないままの美雪が来る。
そう、二人は触れ合わないまま繋がっていた。
健司は年を取り、余命いくばくない状態だが、美雪は映画から出てきたままだ。
それでも二人は隣にいる関係でずっと過ごしてきたのだろう。
ある意味うらやましい。
一緒にいたい。
触れ合わなくても心がつながっていたらそれでいいんじゃないかってこの年になると思う。
そして健司は結末を書く。
夜中に美雪のもとに電話がなる。
健司が危篤状態になっている。そこで健司はいつもの遊びをしようと言う。
お題は「きれいなもの」と言って、言葉が出てこない健司。
そんな健司に最後まで「早く言え。しょうがないなぁじゃあ私からだ」と美雪は今までの感謝の言葉を言い出す。
初めて見た青空
二人で見た虹
ホタル
あげたらキリがないのだろう。
そして最後に「ふれていいか」と言い、健司に寄り添う。
そして消えていく美雪。
もうさ、どの辺からだろう?涙が流れてるよね。
嗚咽系じゃない涙。
切ない涙。
それでも健司の最後まで一緒にいてくれた美雪は素敵だ。
翌朝、書き上げた脚本を見る天音。
健司の書いたラストはモノクロの世界に健司が登場し、真っ赤なバラを手渡すというもの。
真っ赤なバラを受け取るとモノクロの世界が一気にカラーの世界になり、そこで二人は結ばれるというハッピーエンド。
すごい長い時間かかった脚本ってことになる。
ハッピーエンドで終わらせて。
そう、脚本の中ではハッピーエンド。
ハッピーエンドの形はいろいろあると思うけど、生涯を添い遂げた二人はハッピーエンドだよね。
羨ましいと思う。
綾瀬はるかのお姫様ぶりが天然過ぎて地じゃないかと思う感じ。
坂口健太郎の子供のような笑顔がね、屈託なくてほんといいのよ。
嬉しいという表情がね、うちの犬のような・・・(怒られるか)
でもほんと悲しいけど、ホロっとくるものがある。
そんな映画だったよ。