21年前の事件は忘れられない
21年前の5月24日。あの事件が報道された。
1997年。
神戸で起きた連続児童殺傷事件。
罪を犯した人は幸せになってはいけないのですか?
この映画の根底にあるものは「罪を一度でも犯したらその人は幸せになってはいけないのか?」
この映画では3人の過去の罪と向き合う人が描かれている。
主人公の生田斗真演じる益田の罪。
瑛太演じる鈴木であり、青柳健太郎が少年A。
そして佐藤浩市演じる山内の罪。
開始すぐの山内の罪がわかりづらい。私は少年Aの父親なのだと思った。
多分、実際の少年Aの家庭をベースにしているのだろうと思う。
山内はタクシー運転手をしているが、そこにある男性が訪れて酒に酔った状態で待っていた。
「俺の子供を返してくれ」
償いをしても追いつかない山内。
見えてくるのは自分の罪ではなく、自分の子供の犯した罪の賠償。
自分の子供が殺してしまった子供の親の元へと謝罪に行くが「こんなことされても子供は帰ってこないんだ」と冷たく突き返される。
それでも行くのは自己満足なのか?
親の責任なのか?
親はどこまで責任を持たなければならないのか?
それが交錯している。
殺人事件が発生し、そこに山内のタクシーでかけつける雑誌記者の山本美月演じる杉本清美。多くの人の頭によぎるのは過去の連続殺人事件。犯人の目星がつかない清美は編集長から少年Aのその後について探るようにと言われる。
ある工場に益田と鈴木が入社する。
鈴木の暗さにみんなが遠巻きにしている。
益田は元ジャーナリストということが知られているが、それなりに先輩につく。
1戸建てに住む先輩に半分脅されて鈴木の部屋を漁る。そこにある絵。ちょっと年齢のいった女性の裸体。
ナイフまである。
得体の知れない人間と言うことは言える。
夏でも長袖のシャツを着ていることもあり、工場では鈴木のシャツをめくりあげ入れ墨があるのでは?と言うことも思われている鈴木。
そんなことを遠目で見ている益田。
そんな益田もうなされる日々だった。そして隣の鈴木も。
鈴木はあまり部屋に寄り付かない。街で時間を潰しているところで逃げる夏帆演じる藤沢美代子を助ける形になる。
美代子はどこかビクビクしながら生きている女性で、まぁ見ててイライラするタイプの女性。
ある夜、青木崇高演じる先輩の清水が玄関で酔いつぶれて嘔吐している。
自分のことを悪く言っている相手だと知ってか知らずかそんな相手に対しても介抱する鈴木。普通、躊躇してしまうことをすんなりとする人間だ。
そんな鈴木に益田が「自分の自殺した同級生に似ている」と言う。お互いにうなされていることに気づいている。
お互いの根底を知りたいと思いながらもそれ以上は聞けない。そして鈴木は唐突に「俺が死んだら悲しいと思えるか?」と問う。益田は戸惑う中で「悲しいに決まっているだろ」と言う。それは鈴木にとっては重要な一言になっていく。
鈴木は美代子が追いかけられている場面に出くわし、助ける形となる。
元カレの達也は彼女をAV出演させていた。
益田は自分の罪と向き合おうとしていた。
それは自殺した同級生の親のところに行くこと。余命いくばくもない同級生の母親にとって益田は息子の唯一の友だちだった。
益田にとって同級生の自殺は消えない過去と罪だった。
益田は仕事中の不注意で指先を2本切断してしまう。
切断した指を氷に入れて持ってくる鈴木。
無事に指の手術が終わる益田。見舞いに来たのは元恋人の雑誌記者の清美だった。清美は児童殺人事件で行き詰まっていること、そして少年Aの再犯じゃないかと言う噂があることについて意見を求めるが、ジャーナリストを辞めた益田は拒絶する。
退院した益田を祝うために先輩の清水や助けた美代子、鈴木も来てカラオケを楽しむ。
楽しそうな鈴木の動画を撮る益田。
帰り道、指のお礼を言う益田に鈴木は「友達だから」と告げる。
清美から再度の意見を求めるライン。事件を調べる益田の目の前に14歳の鈴木に似た少年の写真が目に入る。
そして、医療少年院の先生の写真。それは鈴木のスケッチブックに描かれていた人だった。
鈴木は「少年A」なのか。
「少年A」を辿り、少年Aの中学時代の同級生を訪れる。そして鈴木の動画を見せると本人だと教えられる。
「ともだち」になった人間が犯罪者だった。
別のストーリーも展開している。タクシードライバーの山内だ。
誰かの葬儀へ向かう。そこは元妻の父親の葬儀だった。
息子が未成年で無免許運転の上、小学生を殺してしまう。そのことで家族は解散し、それぞれで生活を送っていた。
今の日本は子供の事故であっても家族全員を許さじという空気が流れる。
自分の子供が殺されたのにという被害者意識もあるだろう。それを受け止めて謝罪の意識だけで生きていた山内にとって久しぶりの元妻家族との再会だった。
そして元妻の母親も在宅介護状態になっていたが、何も手助けを出来ていない。
そこに財産分与の話となる。自分たちはそんな資格はないと言う山内に「家族だろ?」というが、山内にとっての家族とは?がある。
そんな元妻との会話で事故を起こした息子の現在を知る。
家族を離散したのに息子は家族を持とうとしていた。困惑する山内。山内は息子の元を訪れる。
妊娠3ヶ月だという。
自分が他人の子供を殺したのに子供を持つことをどう考えるのだと問いただす。
妻となる女性も「償いの気持ちでいるし、一度罪を犯した人間には幸せになる権利はないのか」と言う。
難しい問題だ。
最後には結婚式をあげる二人の式を壊そうとするが元妻らに止められる。山内にしてみたら償いのあとに家族が戻りたかった意識が強い。それなのに勝手に他で家族を作ってしまうなんてという思いなんだろう。
山内の思いは通じず、息子からは「償いはこれからは自分がしていく。縁をきる。」と言われる。
難しい問題。
医療少年院の白石という先生を演じる富田靖子。どうしても若い時のイメージが大きかったから、ずっと「誰だっけ?」状態。
そして医療少年院ではずっと少年Aを担当し、自分の娘に対して何もしてこなかったようだ。
娘が突然堕胎証明書にサインをして欲しいとやってくる。が、「命をどう思っているの?」と言ってしまう。娘はそのまま出ていってしまう。
それからしばらくして病院から電話。と同時に医療少年院でサイレンが鳴り出す。
現場に駆けつける白石。そこにはいじめられていた少年がいじめていた少年を殺そうとしていた。
白石は「想像して。殺したらいなくなるのよ」と言い、そのまま病院へ。
病院では4ヶ月で流産した娘が寝ていた。
そこでは少年Aにかかりっきりだった母を責める娘がいた。
子供が出来たら幸せがあったと言う母。娘は「いつ殺されるのかわからない、いつ殺すかわからない」と言う。そう、自分がどう頑張っても殺人をする人は殺人をするし、事故で人を殺してしまうんだ。
それは許されないとして社会が成り立つのだけど。
記者の清美に益田なりにまとめたレポートを差し出す。それでも中途半端に感じた清美は「これでは彼に向き合っていない」と突き返す。
うーん、どの立場で言ってるんだ?
で、清美は「動画を見せて欲しい」と言う。
自分のスマホで見せる益田。
鈴木は美代子と仲良くなっていた。似顔絵を描いたりして幸せな感じ。
が、美代子の元カレはそんな美代子を貶めるためにAVのDVDを鈴木の家に投函する。それを見る清水たち。鈴木は怒りを清水たちに向けないようにテレビを破壊する。
それに怒り殴る蹴る清水。どっちが悪だ?犯罪者として更生しようとしている人間に対して一般人がしていることは何なんだろう?
美代子はまた犯されていた。
そんな美代子の元に駆け付ける鈴木。元カレの暴力を受け、自分を殺せと自分で殴る。
それを見た元カレは「狂ってる」と逃げ出す。
少年Aの現在が記事になってしまう。益田の動画の写真を掲載されて。
どういうからくりか全然わからないんだけど。
殴り込む益田だが、止められる。
帰ると雑誌を見ている清水たち。「殺人者と同居していたなんてゾッとする。」
人を殺めているかいないかで昨日までの友は他人となる世の中。
美代子に鈴木からのメッセージが。それに「ごめんなさい」とだけ返す美代子。
助けてもらっていてもやっぱり「過去」が引っかかるものなのね。
自分だったらどうだろう?
わからないな。その場にならないと。
知り合った人が全員善人なんてあり得ないけど、まぁそれなりに良かったのかもしれないけど。
鈴木は家を出て行く。
そして益田は自分のまたも犯してしまった罪と向き合うために最初の罪の場所へと向かう。
そこは中学時代の同級生が自殺をした場所。
この同級生の自殺は1986年に起こった「中野富士見中学いじめ自殺事件」がモチーフだろう。
クラス全員から「葬式ごっこ」をされた中学生が自殺をする。
そんな事件だ。
益田はそのクラスメイトで自殺した同級生の親友だったという設定だ。保身のために見捨ててしまった同級生への自責の念。
自殺をさせてしまった場所へ行く。
鈴木もまた自分が殺してしまった殺害現場へと行く。
益田は鈴木の元へ行かなければと思う。今度こそ友達を守るということを思って。
3つ、4つの罪が入り乱れる。
現実にあった事件をモチーフとして。
益田が起こした事件の当事者は今45歳くらいだろうか?彼らはどう思って日々を贈っているのだろう?
当時の教師は?
酒鬼薔薇聖斗は?
20年まで毎年届いたという謝罪の手紙。それが今年は届かなかったと言う。
手紙を書くことで罪と向き合っていて欲しいと願いながらも届けられる手紙が重かったという被害者家族。
加害男性も35歳。新しい戸籍で生きているのだろう。
数年前には告白本のようなものを出しているが、その後はどうしているのだろう?
そんなことを考えていた。
罪と向き合うこと。
日本ではかなり難しい。まぁそれはどこの国でも同じなのかもしれないけど。