パルムドールを獲得しただけでも
カンヌ映画祭で名誉な賞に輝いた作品というだけでも興味を持てる作品だ。公開初日、ほぼ満席であった。
でも、今週発覚した事件がオーバーラップして余計にいろんなことを考えさせられた。
家族とは?
この作品が世界の人にどう映ったのだろう?
海外から見た日本はどういう国だろう?
環境客が増え、裕福な感じを与えている国の現実として、受け止めてもらえた結果がこの受賞だとは思うのだけど、海外でもある話なのだろうか?
父役の治がリリー・フランキーで妻役の信代が安藤サクラ。
息子役の祥太が子役の城桧吏くん11歳。小学6年生。
妻の妹役の亜紀が松岡茉優で、母親役の初枝が樹木希林。
彼らは家族の役目を演じている家族だ。
どこにも血の繋がりはない。それでも、お互いの利害の一致なのか?一緒に暮らしている。
治が祥太とスーパーで連携で万引きをしているシーンから始まる。
このような光景にあまり驚かない。教えられることは「万引きだけ」そう言ってしまう治なのだから。
コロッケを買って帰る途中でアパートの玄関の前に寒い中、座っている女の子に気づき声をかける治。
「コロッケ食べるか?」
女の子は自分の名前を「ゆり」と言う。子役の佐々木みゆちゃんが小さい頃の芦田愛菜のようで可愛い。小学1年生になったところだろうか。
治は寒い中、可哀想になりゆりを連れて帰る。狭い部屋に母親、妻、妻の妹、息子がいるのに、お金の匂いもしないゆりを連れてきたことに、母親は「もっとお金の匂いのするもんを拾ってくれば・・・」とボヤキながらも、世話をする。
名前を聞き、身体に多数の虐待の痕を見つける。
それでも、誘拐にならないようにと信代と治は団地に返しに行くが、そこにはゆりの両親の言い争う声が聞こえる。
その中に「産みたくて産んだわけじゃない」と言うゆりの母親の声が聞こえ信代はゆりを残して帰ることができずに、連れて帰る。
ゆりは良かったね。
虐待されていても拾ってもらえて。他人のおせっかいで助けられた命がまた奪われた事件が報道されている。
何に反省してゆるしをこうていたのだろう?メモにいたたまれない気持ちしか残らない。
現実に起こってしまった事件が悲しくてしょうがない。映画だけの世界の話としておきたいのに。
治は日雇いの工事現場で働いている。信代はクリーニング店。祥太は学校には行かずにゆりを連れ、駄菓子屋で万引きをする。
店主役の柄本明は知らないふりをしているだけなのだろう。
初枝は亜紀を連れて年金を下ろしに行く。亜紀はJK見学店というマジックミラー越しにサービスを行う店でバイトをしていた。
最近のバイトって・・・これって海外ではどう受け止められたのだろう?そういう観点でしか見られなかった。
まぁチャットレディーとかと変わらないのか?結局は男性の要望によって、女性側のオナニーシーンを見せるというスタンスなんだろう。
意味がわからない。
ゆりは家族に馴染んでいく。身体の痣を聞いても「ころんだ」と嘘を言う。そこには明らかに火傷とわかる痕もある。
春先にやっとゆりが行方不明というニュースが報道される。
両親は2ヶ月以上「親戚に預けた」と言っていたがそれを児童相談所が怪しく思い、警察に届け出ていた。
児童相談所も映画の中では機能しているのに。現実では機能しきれないケースが多すぎる。悲しい。
ゆりの本当の名前は「じゅり」だった。それでも名前を再び「りん」とし、髪の毛も切ってしまう。
りんは戻りたいとは言わない。
子供でも選んだ家族のほうが「キズナ」が強くなると信代は言う。
治は怪我を理由に働かず、信代もクビになってしまう。
信代はりんの存在を知られたことでクビを受け止めざるを得なかった。
万引きしてきた水着を着て信代と一緒にお風呂に入るりん。
りんは洋服を買ってもらうことは虐待されることと同意だった。
そんなりんを不憫に思う信代。
そしてりんが着ていた着衣も燃やすことにした。
夏になり、家族で海へ出かける。
楽しそうな家族の模様。
駄菓子屋で祥太は自分が壁になりりんに万引きをさせる。
駄菓子屋の店主はそのことに気づいたが、祥太にお菓子を渡し、「妹にまでさせるな」と釘をさす。
祥太には最初からりんに万引きをさせることに抵抗があった。
しかし、治は万引きの場にりんも連れて行った。そして祥太の意見に「りんだって何かしてないと家に居辛いだろう」と言う。
祥太の中で膨れ上がる疑念。
そんなとき、初枝が起きない。既に死んでいた。救急車を呼ぼうとした治を止める信代。既に死んでいるのだからと。次のことを考えなければならなかった。
なぜならそこは初枝の家であり、自分たちは「他人」であり、初枝の年金だけが頼みの綱なのだから。
自宅の部屋の中に穴を掘り、埋葬することに。
治は祥太に言う。「この家には最初から5人しかいかなった」
祥太はスーパーに万引きに行くが、りんには表で待つようにと言う。
しかし、後ろを向くとりんが万引きをしていた。
気づいた祥太は陳列棚から物を落としてみかんを盗んで店を出る。
その間にりんも表に出る。
祥太は追い詰められ、飛び降りる。
骨折をし、入院する祥太。聞き取りを受ける治。そこに信代も登場し、一度自宅に着替えを取りに戻ってきたいとその場を後にする。
身の危険を感じた「家族」は夜逃げをしようとしたところで捕まってしまう。
バラバラにされる家族。
りんは海へ行った絵を描いていた。そこには5人でジャンプする家族の絵。捜査員が「何人で行ったの?」と聞くがおばあちゃんのことは言わない。
りんは両親の元へ返された。マスコミが取り囲む中、両親が何食わぬ顔で無事に安堵している。
祥太は子供だけの施設へ行くことになる。祥太から初枝のことを聞き出そうとする捜査員だったが、口を割らない。そして一人で車での中で生活していたと言い張っていた。
亜紀は初枝が「家に来ない?」と言われて家族になっていた。
亜紀の祖父が初枝の元彼?という間柄なのか?度々、亜紀の実家へ行き、線香をあげていた。亜紀のことは知らせずに。
亜紀もそのことは知らず、お金のために利用されたと気づく。
治は誘拐を信代のしたこととした。
この二人の関係性は?
治は信代の元夫を殺害していた。そのため、信代が罪を被ったほうが軽いと判断した結果のことだった。
信代は捜査員役の池脇千鶴から「母親になりたかったんでしょ」と言われる。
女性同士、きつい。
子供から「お母さん」と呼ばれていたのか?など彼女を追い詰めていく。
りんが自宅に戻されたと言われ、なぜ虐待のことを言わないの?と思ってしまった。
りんは自宅に戻り、母親にまた冷たくされていた。りんは信代にしてもらった優しさを母親に向けるが、母親には怒られてしまう。
母親は「じゅり、お洋服買ってあげるからおいで」と甘い言葉を言う。きっとそう言って来たじゅりを叩いていたのだろう。じゅりは首を横に振って近寄らない。そして一人玄関の外で迎えに来てもらえないかと待つ日々になっていた。
祥太は施設から治といっしょに信代の面会に訪れていた。
信代はそこで祥太の過去について告げる。
「あなたは松戸のパチンコ屋の駐車場に居たの。習志野ナンバーの赤のビッツ」
「本当に探せば本当の両親が見つかるから」と。
偽家族を解体した瞬間だったのか?
祥太ももしかしたら、この二人に助けられていたのだと思う。
パチンコ屋の駐車場で熱中症で死んでしまう子供になるところだったのかもしれない。
だから祥太には記憶はない。
そのくらい小さい頃からこの二人に育てられていたのだろう。
その日の夜は治は祥太を一人暮らしているアパートへ連れていく。
そして治は言う。「お父ちゃんからおじさんになる」と。
翌日のバス停。祥太は言う。「僕、捕まろうとした」と。
きっと教育をされなくても善悪というものはわかってくるのかもしれない。
りんという存在を守らなければと思ったときに正義が出てきたのだろう。
家族が終わった。
それでも亜紀は行く場所がなく、一人、元の家に行く。
そこにみんな戻る日があるのか?そんな想像をさせられる最後だった。
エンディングテーマもない。
この映画のメッセージを海外ではどう受け止めたのだろう?
そしてこれから観る日本人はどう受け止めるのだろう?
重いテーマ。
リアルに抱えている問題。
映画が評価され、問題の解決になることを期待するのだけど。