【映画 Vision】感想。吉野の山奥にある精神を浄化する場所

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舞台挨拶ビューイング

公開初日は関西方面での舞台挨拶だったらしい。今日は関東で130会場に中継されるライブビューイング舞台挨拶。

日本人には興味がむかないのか?舞台挨拶付きなのにほとんど客が入っていない。

残念だ。

今の日本に大切な何かがある映画なのに。

全てに繋がりがある

ジュリエット・ビノシュというフランスの女優さんを私は実は知らなかった。

それでもカンヌ映画祭ではいろいろな賞を受賞されている女優さんだ。

そんな女優さんが主演で日本の吉野という人里離れた場所の物語だという。

河瀨直美監督は奈良のご出身ということでビジョンがあったのだろう。

そして生まれた「Vision」という作品。

奈良の山奥、鹿を狩るシーンから始まるが、それが意味することは?

最初から最後まで全てに繋がりがあることがわかるのは終わってから。

2度見て確認したい感じになる。

それでもセリフということよりも人間の繋がりが紡がれていく作品だ。

劇場予告を見て、永瀬正敏が主演の映画だと思っていた。

一人山を守るために20年前から住んでいる智という男性だ。

木を倒し、薪を作って夏木マリ演じるアキの自宅へと届ける。

舞台挨拶に登場した夏木マリは派手な衣装と派手な髪型がカッコいい女性だが、アキは髪の毛も短くし、一人で生活している老婆?でもないが、そんな感じだ。

アキにお茶を入れてもらい雑談する二人。

アキが智に「いくつになった?」と問うと「もう忘れた」ととぼけるが「48」と答える智。

智もアキに年齢を聞く。

アキは「ワシは1000年前に放出された胞子だと」

嘘なのか、本当なのか。

そんな雰囲気が漂っているアキ。

アキは智に「雨がくるぞ」と言う。晴れた空に雨の気配はない。が、じきに雨がやってきた。

アキには自然が見えている。

お互いが一人で生活しているが、お互いの存在は必要なのだろう。

智にはコウという猟犬がいるけど。いつも一緒に山に入るコウの存在がとてもいい。

ジュリエット・ビノシュ演じるジャンヌが電車に乗って吉野を目指している。

連れには通訳の美波演じる花がいる。

花はジャンヌの旅行記などに感銘をうけていることを告げる。

美波は役としてフランス語の通訳をしていると思ったら、舞台挨拶でも通訳をする。たまたま通訳さんが聞き逃したジュリエットの言葉を翻訳してくれた。

とても素敵な言葉だった。

ジュリエットさんはとても言葉が豊富で通訳さんも大変だったと思う。

司会者の言葉はわからないから突然話し出してしまったりするわけで。

それをフォローした美波さんに感動した。

ジャンヌと花は春日神社の前で智と出会う。

智に何かを感じたのか?ジャンヌは「Visionという薬草を知っているか?」と聞く。

知らないと答える智にいろんなことを尋ねる。

人嫌いなのかと思っていたが、人がいなかっただけだ。きっと。

智は20年前にいろんなことに疲れてこの地にやってきて、山の守り番をしていると告げる。

何かを感じるジャンヌ。

二人は智の住まいへと一緒に行き、しばらく宿泊させて欲しいと言う。

受け入れる智。

Visionとは何なのか。

智の思うものは感じることが全てだと。

そのシーンがとてもいい。

劇場予告でもあるけど。

森へと行っていたジャンヌと花をアキを乗せて車で走っていた智が追い抜かす。

アキが「いいのか?」と聞くと智は車を止めて二人を待つ。

アキはジャンヌと話、「あんたがそうか」「待っていた」と意味深な言葉を告げる。

アキの家でで薬草のことを聞くジャンヌ。

Visionという薬草のことは知らないが、1000年に一度のことが起こる気配を感じるというアキ。

それは何なのか?

智も山に少し違和感を感じていた。

アキは目が見えない。それでもいろんなことを感じていた。

目の見えない演技。

山の景色、紅葉の時期もあって、赤く染まる山。そして森に注ぎ込む光。

全てが美しい。

花が一人山を降りて帰った。おばあさんのところへ行くという。

二人きりになった智とジャンヌ。

そして結ばれる二人。

だけど、ジャンヌの想像にはなぜか森山未來演じる岳が重なる。

岳とは誰なのか?

フランス人だからなのか?激しい絡みのシーンではないが、官能的な描写がすごい。

アキが自宅を閉めて森へと行く。

アキは1000年に一度の訪れを求めているのか?神々しい光の中で舞う。

神々しい神木の前で。

そして神木の前で息絶える。

それの意味するものは?

アキが姿を消し、そしてジャンヌも仕事で帰国するという。

「まもなく”ビジョン”が現れる」と言い残して。

秋になり、一人の青年を保護する。岩田剛典演じる鈴だ。

鈴は足を怪我していた。自宅へ連れて帰り彼らは次第に心を通わせる。

智の林業を手伝う鈴。

一人では出来ない作業も二人ならできる。

1ヶ月ほどしてジャンヌが戻ってくると、自分の居場所がなくなっていることに気づく。

それでも、男女は結びつく。

結びつけば結びつくほど岳の姿が出てくる。

彼は誰なんだ?ジャンヌの心の傷なのだろう。

満月を見上げる寂しそうな鈴を見つめるジャンヌ。

翌朝、コウの姿が見えないことに気づく智は鈴まで姿を消したことに気づき、後を追う。

見つからない。

しばらくして、鈴が戻る。腕の中に息をしていないコウを抱いて。

犬が亡くなるシーンは駄目だ。泣ける。きっと麻酔とかで気を失わせているのだろうけど、智の悲しさが伝わってくる。

何がビジョンなのか?

映像の中にあるビジョンが何なのか?

鈴が森へと入る。ジャンヌは鈴にビジョンについて教える。

1000℃ => Vision => PAIN

この意味するものは?

明らかになる繋がり。

岳は智の前の山の守り人だった人間なのだろう。しかし、田中泯演じる源に鹿と間違って撃たれてしまう。

ジャンヌのお腹には岳との間に命が宿っていた。

神木の前で出産するジャンヌ。

そのまま神木の前に置いて姿を消す。

赤ちゃんに気づいたのがアキだった。

アキを自宅に連れて帰るが、なぜか自分で育てるのではなく、源の自宅へと置いてくる。

源が育てたのが鈴だ。

鈴は自分の母が誰なのか次第に気づく。

そして1000年のときなのか、森が火に包まれる。火の中にいる鈴。

助けようとする智に「大丈夫だから」と。

火は収まり、平穏が訪れる。

ビジョンとは何だったのか?

山はトンネルが出来たことで人の流れがなくなったと言う。

時代の変化で忘れられた場所がある現実。

それでもそこには太古から息づくものが今でもしっかりと根を張っている。

なぜ人は疲れると森へ行きたくなるのだろう?

この映画を見ていて、自分の疲れを感じた。

あぁ羨ましいなと。

ビジョンに包まれて生活することを目指した智が羨ましいなと。

心が浄化されると舞台挨拶で永瀬正敏は言った。

浄化だろうか?

それでも人間とは不思議な生き物だと思わせられた。

舞台挨拶でフランス人のジュリエット・ビノシュによって日本の良さを再確認させられた。

通訳役の美波はジュリエットの探究心に日本人であるのに知らないことが多すぎて大変だったと言っていた。

一流であることがそこにあると。

河瀨直美監督は最後に「万引き家族」と公開日が同じであることに言及した。

同じ時期から似たような雰囲気を持つ二人だと思う。

そして「万引き家族」も「Vision」も現代社会において見えていない影の部分を探しているような作品だ。

光が大切だと言う。

光があるから、影ができる。

その影を感じる作品なのだと思う。

映像はキレイで神々しく、ISO感度10000くらい?って感じの世界観。

過剰な演出もなく、自然な生活の1部を切り取っているような作品。

岩田剛典・・・で良かったのか?

また違う一面が見られたが、彼の笑顔がない作品の方がいいと思ってしまう。

彼の笑顔は邪魔だ。

彼の笑顔は悲しく見えてしまう。

なぜだろう?

まぁ鈴という役はそんな役だったのかもしれないけど。

もう一度観に来なきゃな作品だ。

散りばめられている様々な要素を確認しながら。

観たいと思う作品だ。

週末興行ランキングで10位に入るかどうかはわからない。

日本人が目を向けたがらない要素かもしれないから。