仕事しかしていない人間
あと10年ちょっとすれば我が家にも降りかかりそうな問題。
仕事以外に何もない男は仕事から開放されたとき、何をできるのだろう?
週末、寝ているだけの人が陥るであろう問題だ。
自由にすることの出来ない人たち
60歳定年説。
まだまだ元気な年齢でいきなり昇っていたハシゴを外された人はどう生きるのだろう?
特に大手だけで終わった人は敷かれたレールに乗って生きてきた人生じゃないのだろうか?
舘ひろし演じる田代壮介という人は東大の法学部を卒業し、大手銀行に就職し、15年前までは役員への道が約束されていたはずだった。
が、
レールは切り替えられ、役員の道ではなく子会社へ出向し、専務取締役という役職で定年のその日を迎えた。
黒塗りのハイヤーが廻されて自宅まで送られる。
それはまるで「生前葬」しかも本人主体ではない押し付けられた形の。
まだこんな感じの人がどのくらい残っているのだろう?
年功序列が崩れ、リストラがあったりして最後まで働ける人はどのくらいいるのだろう?
自宅では妻の千草役の黒木瞳と娘役の道子の臼田あさ美とその娘役のしおりの野澤しおりと千草の従兄弟役の俊彦の田口トモロヲが退職のお祝いに駆けつけている。
自分の意思で動けない状況から見ても先行きは不安だ。
今まで忙しかったのだから、ゆっくりしてください。
千草は壮介にそう言う。
壮介は今まで忙しくてろくに旅行にも行けなかったから行かないかと誘うが千草には仕事があった。
温度差のある夫婦。
突然、家にいることになった壮介だが、やることが見つけられない。
しまいには妻の仕事場に迎えに行ってしまう。お抱えの運転手は要らないからと無下にされてしまう。
今までの距離感に慣れた妻が突然自分に構ってちゃんになられたら、「定年ウツ」になる妻が増加するって話もある。
自宅に居て何もしない人間。
人を使うことしかしない人間。
妻を何だと思っているのだろう?な人間。
夫は妻を娘が幼い頃に行った公園へ連れていく。桜が見頃だった。
それを見て「散る桜 残る桜も 散る桜」と詠み始める。
自分に対するあてつけなのか?夫の真意が理解出来ない妻は不快になる。
壮介が古本屋で石川啄木の本を手に取る。それを広末涼子演じる浜田久里が残念そうに見つめる。
娘に恋でもしてみたら?とけしかけられた壮介だったが、この時点ではまだ何も起こらない。
街中で壮介は高校時代のチームメイトとバッタリと会う。笹野高史演じる二宮だった。
二宮は一緒に飲みに行こうと誘うが、1件用事を済ませてからという。
その間、時間を潰しておこうとすると、用事の場所に連れて行かれる。
二宮はなんとボクシングのレフリーをしていた。
若者の戦いをさばく姿。
勝者の若者に何かをつぶやく。
壮介は飲みながら何と言ったんだ?と聞くと「敗者の気持ちも考えろ」と言ったのだと。
大切だよね。
帰宅した壮介はそのことを妻に聞いてほしくて話す。が、妻は聞いてはくれない。
夫の愚痴など聞きたくないと相手にしない。
壮介は居場所を見つけようとするが、どこに行っても年寄りだらけだ。
そこでジムに通うことにする。そこで出会ったのが今井翼演じる鈴木くん。新規開発のマーケティングのためにジムへ通っていると言う。
そして、壮介の履歴に興味を持って話しかける。そして壮介に「会社を手伝ってもらえませんか?」と切り出すが、プライドが邪魔したのか断る壮介。
ジムは今やちょっと元気な老人の集会だ。
これではいけないと就職活動を始めるが、下町の夫婦経営の会社では高学歴過ぎて使えないと言われてしまう。とても失礼な話。ハローワークから紹介されたときにあまりにも高学歴だから、面接だけでもってことにしたらしい。
高学歴でも仕事がなければタダの人だ。
そして壮介は大学院に入ることを決意する。
千草は大賛成だ。自分だけに向かう興味ってほんと重いし、うざったいし。
うんうん。共感しちゃうよ。
大学院に行く前にコミュニティセンターで勉強することを俊彦に提案される。
コミュニティセンターで石川啄木の講座が2つため、受付で説明を求めると、そこに居たのは本屋で会った久里さんだった。
久里さんは困った場面で方言が出るらしく、お互いに岩手出身ということで意気投合する。
死んだようだった壮介が生き生きとし始める。
久里さんに「恋」をした壮介は久里さんに気に入れられようと「男」として頑張る。
それでも、30も下の女性はすぐには落ちるわけもなく、娘は「そんなね、ご飯だけおごってもらって捨てられるだけよ」と図星をつく。
そこでまた鈴木くんから声を掛けられる。IT会社の社長をしている鈴木くんの会社の顧問を引き受けて欲しいと言う。
ベンチャー企業のデメリットは人脈がなく、信用もないことだ。そこで高学歴で銀行出身の壮介を顧問にすることで融資をもらうことに。
千草が帰宅すると、「髪を染めてくれないか?」と言う。
現役中は毎月髪の毛を染めていたようだ。
千草は喜ぶ。
そして銀行へ行き融資を取り付ける。
全てが動き出したかのように見えた矢先、社長の鈴木くんが突然死んでしまう。
幼い子供を残して。
今井翼〜、今彼自身が休養中でもし元気だったら舞台挨拶に参加してるよねぇ〜って思うだけに役と重なってしまうでしょ。
今井翼としてのキャリアが死にかけているってことで。
壮介は会社を辞めようと決める。自分を採用した鈴木くんが亡き後は新しい社長の体制でいくべきだと。
しかし、社員は「自分では役不足だから社長を引き受けて欲しい」と言ってくる。
真剣に悩む壮介。
それでも勝手に決めてしまう。
千草は大反対する。自分も新しいことを始めようと相談したかったのに、自分のことには耳を傾けようとしない夫。
それでも会社の社長となる。
久里さんから連絡がある。壮介は「熱海で会議があるから良かったら来ないか?」と誘う。ただし、1泊しなきゃいけないがと。
OKを聞き喜び、妄想を広げる。
熱海に来た久里さんと話をすると、久里さんは童話作家として自分が落選し、友達が当選したことを妬んでしまい、そんな自分が嫌だと言う。
壮介は「久里さん、もう童話作家辞めなさい。」と厳しい言葉を言う。久里さんは「やってきた10年が無駄になる」と拒むが、壮介は「今は10年で済むが、辞めなければ一生が無駄になる」と続ける。
そうなんだよね。
始めること、辞めること、諦めること、そのタイミングがほんと大切で。
自分のこの半年も同じ感じだったなと。たった半年だけど残り時間が少ないこの時期には意味が大きいってことも感じたわ。
ホテルへ行くが、久里さんは「駅前のビジネスホテルを取ったので」とやんわりと断ってくる。
うまくはいかないわね。
部屋に入ると千草から電話で「相談したいことがある」と。
浮気?がバレたのかと焦る壮介。離婚か?と悪いことしか思いつかない。
帰宅した壮介に千草は「ハンコ押して貰える?」と。
離婚届か!?と思ったら、自分のお店を持ちたいからと言う。ホッとする壮介。
俊彦の家で内装などの打ち合わせに道子と壮介も一緒に行くとそこになぜか久里さんが。
久里さんは俊彦の彼女だった。
俊彦と旅行に熱海に行くという。野暮用で行ったレストランが良かったと。
野暮用にされてしまう壮介。そんな壮亮の態度に道子は「パパの好きだったの彼女でしょ」とすぐにバレてしまう。
会社はすぐに危機に直面する。ミャンマーの仕事で入金が頓挫したのだ。そして支払われる要素がなくなったという。
倒産するしかない会社。
倒産の日、壮介を心配する社員に「いや、今度妻が店をオープンするから養ってもらう」などといい出す。
社員は反発する。
自分たちは露頭に迷うのに、社長夫人は美容院をオープンする。表だけをみたら誰でも妬む要素満載だ。
そして、社員がオープン前の千草の店へ行き、罵倒していったようだ。
一度、うまく廻ったはずの歯車がまた空回りを始める。
千草は荷物をまとめる。それを見た壮介は「出ていくのか?」と引き留めようとするが、「同じ空気を吸っているのも嫌なので出ていってください」と追い出す。
わかるわ。
自分のこと以外何も考えない人間っているのよ。これで仕事がうまく廻っていたとすれば、周りが優秀なんだろうなって。
私はその周りにはなれないタイプだわ。駄目は駄目。
まぁ追い出すことはしないけど、自分が出ていくわ。
自分より弱者の世話も出来ない人間はろくなものではないと考えております。
そして追い出された壮介は自分の母校の高校のラグビー部が県の決勝に進出していることを知る。
二宮に連絡をつけて久しぶりに地元へ行く。
そこには後輩の姿が。
壮介はラガーマンであだ名は「ラガン」キャプテンだった。
先月のアメフト部の問題とオーバーラップするようなセリフ。偶然なんだろうけど。
キャプテンとして勝たせたいと思うあまり「反則してでも勝つ!」と喝を入れるが、「16番」と呼ばれていた選手に「そんなラフプレーで勝ったところでどうなるんだ」と反対されて揉める。
「16番」はチームの監督の息子だった。
この「16番」のような選手が一人でも日大アメフト部に居たら、こんな国を巻き込んでの大騒動にはならなかったのに。
チームは負けてしまう。
そして壮介は「16番」の自宅を尋ねる。そこには監督とそっくりに成長した「16番」の姿と痴呆になってしまった監督の姿があった。
飲み会には大勢のOBが集まっていた。
そこで壮介は自分のことを語りだす。地元へ帰ってこれなかった自分。
キャプテンで東大に入学して銀行に入ってと出生コースを歩んでいたことでそこを踏み外した自分をどうしても見せることが出来なかったと。
それでも周りは同じようなおじさんだという二宮。突然、カツラを脱ぐ。
だよね。笹野高史さんなのにズラってって思ってたんだ。
そして、地元のNPOを助けてほしいと言われる。
実家には母親と妹役で高畑淳子さんがいる。ちょっとイメージがソフトになった感じがする。
東京に戻り、千草の店を尋ねる。
そして「離婚しよう」と切り出す。壮介が考える最良だったのだろうけど、相談とか話し合いという単語がないだけに話が突然すぎる。
千草は「私、離婚しないから」と言う。まぁ、離婚するデメリットはあるかもしれない。
そんな両親を見た道子は母親を凶弾する。勝手すぎると。自分にも子供がいる中、両親の離婚を後押しするような娘。
まぁ離婚しても自分にとって親は親だしね。
好きでもない関係の二人が夫婦でいることが現代社会においてはナンセンスなのかもしれない。
そして二人は「卒婚」することに。壮介は地元に帰る。
春の季節。
桜が満開の頃、声を掛けられる壮介。千草の姿が。
千草は「髪の毛を染めに来た」と言う。そして、「2ヶ月に1度染めに来るから」と。
離れてみてわかるお互いの良さがあると思う。
近すぎて見えないもの、負担に感じるもの、それら全てから開放されたい願望がある。
2年前から自分の中で還暦をどう迎えるかを考える。まだまだ先の話だけど、それでも今に不満があるから考えるのだろう。
なぜなら何もしなければ彼の蓄えを気にして自分が生活をしなければいけないかもしれなくなるわけで。
そんな自分にはなりたくないと思った。
千草のように自分のお店を持つまでの気概は持てないけど、自分でどうにかなるようにはしておきたいと思っている。
それが夢に終わるかどうかはわからないけど。
「卒婚」まぁ我が家には子供もないからそういう感じはない。
共同生活の解消って感じになるだろうか。奴隷契約の解除だろうか。
男の人の家事に対する対価が低すぎるし、家に縛り付けていることへの罪悪感の欠如に驚く。
私は私の生きたいように生きる!
「終わった人」は何を終わりとするのかわからないけど、現役中に模索していない人はその時になって振り回されてしまうことを知っておくべきだ。
現代社会で「終われる」のはいつなんだろう?
病気になったとき?
死んだとき?
舘ひろしと黒木瞳の夫婦役。
もう68歳になった舘さんだけど、63歳の設定。それでも彼の雰囲気や立ち居振る舞いが年寄り臭さを感じない。
黒木瞳さんはかわいいおばさま路線になって、変わらずキレイ。
カッコいい、美人な役者さんだった二人の年齢なりのチェンジを楽しみにしている。
舘さん、あと少しで70にはほんと見えない。