【映画 母さんがどんなに僕を嫌いでも】感想。太賀の振り幅がすごすぎる・・・

太賀という俳優

主演の太賀、まさか映画公開と同時期に「今日から俺は!!」で全然違う今井という役をやっているとは思ってなかっただろう。

今井という役をやっている人間と同一人物だと思えるところがまるでない。

太賀の今までの役は主演ではなかったから「面白枠」的な部分が多かった感じだけど、これは役者太賀の凄さを感じた。

そして歌が下手なのねも。。。

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母親の愛を受けられなくても

子役のタイチを小山春朋くんの凄さもある。

お母さんが好きという気持ちが伝わらずに虐待という形で戻される。

それでもお母さんが好きで好きでという空回りの関係。

吉田羊演じる光子という女性はきっとその辺に普通に居るのだろう。

表の顔はいいし、プライドも高い。でも、内面はナイーブで神経質で自分をどう繕うかを迷う。

タイチは9歳で施設に入れられる。

ネグレストや虐待を受けてても子供は親と一緒に居たいのか?

父親にも脅され、母親にも愛されない子供はきっと自分を不適合品と烙印を押してしまうのだろう。

幼いタイチの良き理解者であり唯一の見方は父親の会社の従業員の女性。

婆ちゃんと呼んで可愛がられる。

木野花さん。先月「愛しのアイリーン」ですごい姑役でお見かけした後だから太賀以上の振り幅に驚くわ。

施設から戻ってきたタイチに光子は「離婚したから引っ越す」とタイチの「婆ちゃんに会いたい」という気持ちは聞くことはない。

慰謝料で買った豪邸に暖かさはなく、離婚後に余計に不安定になった光子の虐待は増す。

それでも母親の気を引こうとする子供。

子供ってなぜそんなに無垢なの?って感じ。

子供のいない私にすると・・・子供めんどくさいなって思ってしまう。

お互いがお互いの欲求しか求めない関係。姉が居るがほとんど存在していない。

大人になったタイチ。

劇団の新人団員募集を見学に行き、突然一緒に練習をさせられる。

劇団のエースのキミツの森崎ウィンからは裏の顔で話しかけられる。

人前では笑顔を振りまく姿と裏の毒舌の姿に母親の姿を重ね合わせる。

キミツはタイチに入り込む。

タイチはキミツに入り込まれつつ過去の苦い経験を回想するという展開。

17歳で母親に殺されかけ、家を出る。まぁとても良い子なのよね。

こんな親の元でグレることもなく普通に居る。

離婚した後は母親が生活をさせていたってことなんだと思うのだけど、子供は母親にいろんなものを要求しがちだ。

母親だから当たり前と思ってないだろうか?タイチという人間のどこかにはそれを感じた。

自分にはそれがひとつも与えられなかったという意識で大人になっている。

会社の同僚の女性カナが劇団の練習を見に来る。自分の彼氏の大将を連れて。

初日からなぜかキミツも含めた4人で飲みに行き、意気投合する。

キミツもタイチに毒舌ながらも本音でズケズケと入り込む。

本音を出せないタイチ。

会社で営業成績が上がってくる。しかし、そこには不正を犯してもという自分の中にいる母親像を感じる。

仕事漬けのタイチを気にしてキミツが車で大将とカナの待つホテルへ。

そこで飲み明かす。

お風呂に入ろうと言われると「人前では裸にならない」と断るが、翌朝大将に誘われてというか強引に連れて行かれる。

タイチの背中の数々の虐待の形跡。

大人になっても消えない痕。

大将は「もう俺に隠し事をするな」と言い、カナは「うちの子になっちゃえばいいのに」という。

タイチにとって初めての経験で嬉しすぎて笑顔の作り方がわからないと引きつった笑顔だ。

翌日、母親の再婚相手のお葬式だからと母親から連絡を受け6年ぶりに対面する。

しかし、母親は「もう帰っていい」と突き放す。

キミツが来てタイチの顔色を見て母親と何かがあったことに感づく。

タイチは「6年ぶりの再会なのに”どうしてた?”の一言もなかった」と後悔した顔で言うとキミツは言う。

「気づいた人間から変わる。それは親からとか子供からではなくて、気づけた、受け入れられる人間が変わるということ」だと言う。

翌日、タイチは母親のために朝食を作る。

突然来られて朝ごはん作ったから食べろはね、親切の押し売りだわ。やっぱり。

タイチは「だったら何が食べたい?なんでもするから」と言うが光子は「ズッキーニ」と言う。イタリア料理のズッキーニの料理が食べたいと言う。

タイチは困る。ズッキーニは普通に手に入るものなのか?

母親は「出来ないんだったら言わないで」

うーん、この母親の気持ちとても共感してしまう。構うなって思うタイプだからかな。

タイチは調べて作って置いて帰る。

翌日、完食のあとを見て小さくガッツポーズだ。

子供・・・母親のためにと掃除をしだすが、花瓶を割ってしまう。

そこには督促状の山が。

計算すると1億以上ある。亡くなった旦那さんの借金だが、遺産放棄をすれば良かったものをなぜ相続したの?と言う。

無知でしたことではない。

意味があってしたことを否定された気分はまた逆鱗にふれる。

光子は倒れてしまう。脳梗塞でリハビリが必要だという。

タイチはタイチなりにリハビリ施設などを探して光子に提案するが、光子は自分をリハビリ施設に入れて自己破産して家を売るつもりでしょと凶弾する。

「かまわないで!」

母親にタイチの真意も伝わらない。

光子の根底にあるもの。それはプライドの高さ。「みっともない」ということがあり、自己破産はみっともないという感じなのだ。

それでもタイチは負けない。

キミツを連れて二人で劇団の劇をする。

森崎ウィンは歌うまいねって感じだけど、太賀・・・下手ね。

「ぞうさん」の「あのね、母さんが好きなのよ」って部分も音がまるで合ってない・・・ってくらい外れてた。。。音感はあるんだよね?ドラム叩けるんだから。

光子はそんなタイチを見て「みっともないからやめなさい」と怒鳴る。

タイチは「みっともないなんて何でもないから」と叫ぶ。やっとタイチの気持ちが届く。

退院後、散歩の途中で自分の作った「まぜごはん」を母親に食べてもらうと「おいしい」と一言。

そしてタイチの思いと再度、自己破産についてお願いするとやっと納得する。

そして「お店を出すなら銀座ね」とプライドの高さは変わらない。

母親は自己破産後に亡くなったとなっていた。

タイチはキミツとの出会い、カナと大将の間には赤ちゃんが誕生していた。

カナはひどいつわりで点滴を受けていた。その場で「お母さんってすごいよね。こんな大変な想いを10ヶ月もして生まれたらもっと大変で」と言う。

そうなんだよね。まぁ「あんたなんか産まなきゃ良かった。」「堕ろせば良かった。」と言ってしまう親が少なくないのだろう。

それでも女性は自分の人生を子育てに費やすのだ。

虐待していてもご飯は作る。肥満になるのは体質だったりやっぱりどこかにひずみがあるのだろうけど。

そして光子がタイチを愛せなかった理由は妊娠中に夫が浮気をしたことが許せなかった。それがそのままタイチの責任となってしまったのだろう。

23年。

うーん、あっという間だよね。人間の記憶と憎しみを癒やすには期間としては継続しちゃうよね。

そして自分も虐待を受けた母親は自分もどう子供を愛して良いのかわからない負のスパイラルがある。

タイチは仲間の存在で最後の短い時間、母親との時間を有意義に過ごせたのだろう。

たまに思う。神様は快楽と生殖をセットにしてしまったのだろう?

生殖を目的としていない快楽に付随した生殖は時に悲しみの蔓延にしかならないのではないだろうか?

太賀の一途さがほんと良かったし、最近の吉田羊がネグレスト母連続という感じでとてもそれがマッチしてしまって・・・

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