著者・監督ともに女性という作品
きっと男性監督が描いたら、また違うものになっていたのかな?と思う。
まぁ小説の大枠は同じだけど、それでも、設定が映画で若干変わる。
三島監督ならではという構成も感じた。
男とは女とは
三島監督作品を案外観ている。
「しあわのパン」
「ぶどうのなみだ」
は北海道を舞台とした作品だった。
そして「幼子われらに生まれ」「ビブリア古書堂の事件手帖」とこの「Red」は監督の個性が出ているなぁって感じがした。
そして原作者の島本理生さんの「ナラタージュ」も観たな。
って思うと、やっぱり男女の「愛」よりも男のいろいろがあるのだと思う。
3人の男と1人の女。
彼女の周りには全ての男性を象徴するような男性が居る。
村主塔子役の夏帆。三島監督作品では「ビブリア古書堂の事件手帖」でも同じような立場の女性だったような。
塔子の夫役が間宮祥太朗。これがまぁ私の大嫌いな男性像。
この男の存在で「結婚」って何?って感じがしてくる。
世の中にはこのような男性はきっとたくさん居るのだろう。
国立で夫の両親との同居。
夕食の支度をしながらも、姑に「いつ開くのか」と聞かれるような状況は地獄だな。
そして、帰宅した夫に「今日の夕飯はハンバーグよ」と言うとやんわりと「お腹いっぱいだから」と断られる。
でも、姑が「魚の煮付けがあるわよ」と言われると「いただくかな」って、最低な対応でしょ。
ハンバーグが嫌いならそう伝えたらいいのに。
子供目線の夕飯を夫に付き合わせるのも気の毒ではあるけど。
しかも!きっと物語としても軸はここだろって言うのが夜の営みをせずに妻に処理させるって女性を何だと思ってるんだ?
ありえない!!と憤慨してたわ。
自分の仕事のパーティに妻を同席させる。
しかも着ていくものまで指定する。
妻を自分の所有物だと思っているのか?
そこで運命の再会をする。
その運命の相手の鞍田役が妻夫木聡。
妻夫木聡も40になるのね。
顔が童顔であまり若い頃と変わらない感じだけど、それでもオジサンになってきたかな。
二人の再会もすごい展開になる。
そして、鞍田は専業主婦だった塔子に自分の所属する事務所の募集要項を送りつける。
「え?元カレに住所教えちゃう?」
などなど驚きもあるが、「仕事をしたい」と申し出た妻に夫の反応は
「なんで仕事なんかするの?」
はぁ〜!!!!?
女性の仕事は家事育児なの?
社会のキャリアを求めてはいけないの?
塔子もとりあえずは反論する。「結婚する時に仕事は続けていいって言ったよね?」と。
まぁのんびりとしたやりとりだけどね。
私の友人もこの数年、同じことを言っていた。
結婚し、子育てをしながら夫婦間に溝が出来てもキャリアを停止した状態でなかなか思うような就職も出来ず、小学生になるまでは時間の自由がある程度なきゃで、かなり大変だっただろうなって。
そんなこともあり、かなりイライラしちゃった。
まぁ二世帯住宅ということで、就職することになるが、塔子という女性の鬱屈した思いが爆発する。
そこには元カレの鞍田が居る。どうしても目で追ってしまう。
が、なぜか同僚の柄本佑演じる小鷹に好かれる。
こちらは「コダカ」さんね。今のドラマ「知らなくていいコト」は「オダカ」さんで。
まぁ小鷹さんもいい男だったわ。
柄本佑がほんといい男ゾーンに入ってきたって感じで。
はっきり言えば、3人の男の中で小鷹が一番だわ。
チャラいけど。
それでも、ちゃんと塔子を見ている。
塔子の行動は、加速する。
家庭のシーンがなくなる。
それでも、クリスマスのシーンがあってぎこちない笑顔の塔子。
夫とすき焼きを食べるシーン。夫に「美味しいものを食べさせてくれてありがとう」と言う妻。
?
違和感でしかない。
夫の「塔子、豆腐と春菊食べて」と言う言葉。
そして「ここのお肉が美味しかったから塔子にも食べさせてあげたかった」と言いながらも一人肉だけ食べ、それ以外しか食べさせない。
まじ、人間としてクズだわ。コイツ。
会食で来て、食べて美味しかったけど、一人で来られるような場所じゃないから、連れてきたってだけだろうって言いたいわ。
お正月。そこには塔子の母親役の余貴美子の姿も。
シングルマザーの母親。離婚した夫にも孫を見せてあげないかと無遠慮に言い出す舅。
うわ、体面ばかりを取り繕った関係ってキモチワル。
母親も「嘘をついて幸せ?」と聞く。
女性は結婚の相手に何を求めるのだろう?
そして我慢をすれば「幸せ」ごっこが続くと思っているのか?
仕事で新潟へ。シーンとしてはオープニング、物語の区切りにちょいちょい挟まれるシーン。
三島監督の映画って感じがする。
最後にやっと全体像がつながるが、最初に最後の仕掛けを見せる。
それはどうなるんだろう?と想像をしてしまう。
鞍田の秘密。
新潟では大雪の影響で帰京が出来ないと夫に電話するが、「母親だろう」と言われる。さすがの塔子も「父親でしょ」と言うが、夫は「帰ってこい」と言い、塔子の行動を咎める。
塔子は雪の中、帰る。
その行動に小鷹は「なんで結婚したの?」と言ってしまう。
同感!
そんなモラハラ夫と一緒に居て、自分を殺して何が目的なんだろう?
子供がいるから?自分は犠牲になってもいいの?
自分の心を殺した行動は結局は破綻するんだよ。
鞍田が車で新潟から帰京をしようと走り出すが、すごい雪だ。
途中で寄ったお店に居たご亭主役の酒向芳が目が見えない役で、奥さん役の片岡礼子が目にもなってるんだけど、そこに「女」の共感が描かれてる。
途中の電話ボックスで電話をする塔子。
オープニングにも出てきたシーンに音がつく。
そして「Red」の意味は?え?それなの?的な。
黄色の電話ボックスの電話ってことはコインオンリーじゃないのか?でも、コイン入れてないんだな。
まぁ今どきテレフォンカードなんて持ってないし、どこで売ってるんだろう?
電話の先の夫は「心配しているんだよ」と言う。お前が帰ってこいっていうから帰ってるんだろうって話で。どうやって帰るのかなんて関係ないだろと私なら言ってるな。
塔子もさすがに切れた。
遅いけど。
そして、一人で弔いをしているところに「マァマ」と叫ぶ声。
そこにはランドセルを背負った娘の姿が。
うわ、夫、やっぱりモラハラだわ。
女性の気持ちとかまるで考えようとしてない。
さすにがね、子供を出してくるのは卑怯よ。
いきなりバーって涙が出ちゃったもん。
小説のラストと映画のラストは違うらしい。
私としては、妻夫木聡がほんと命がけって言うのが目に見えてたと思った。
柄本佑はいい男で、これからの作品はチェックしていこうと思った。
官能小説とは言え、女性監督の描くエロスって想像力を掻き立てる描き方。
俳優さんって大変だなって。
Sexの感じ方って人それぞれじゃないかって思う。
それを表現しなきゃいけないわけで。
エロスを感じないとは言わないけど、やっぱりキレイかな。
「ファンシー」の方が、まぁそれなりにエロスがあったな。
未婚の女性に言いたい。好きになった男と結婚するのが幸せかもしれないが、奴隷にされるなってこと。
ただ優しい男はマザコン・モラハラ夫になりやすいから気をつけよう。
「優しいから」と言う理由だけの男と結婚してもそれは見返りが絶対あるからってことだ。