特別養子縁組
望まれない妊娠。それでも、ここに出てきた少女にとって、大好きな相手との授かりもの。
中学3年生、守りたいものは何ですか?
授からないという事実
私にとって、子供を授かるということは望まないことだ。
幸いにして授かることがなく人生を過ごしてきたとも言い難い。
あのとき、自分にとってこのような選択はなかった。
気づくのが遅れたことで、既に「産む」選択肢しかなかった少女。
いつの時代でもきっとある話なのだろう。
今や情報が溢れている。それでも日本の性教育の遅れから、感情だけで結ばれてしまい、妊娠してしまう。
今回は、中学3年生で初潮も迎えてないのに、妊娠するということのようだったけど、そんなことあるの?な感じでもある。
河瀬監督の作品って感じ。
ところどころで森、木漏れ日がゆっくりとした時間、流れる。
今回は、そこに海の要素が加わった。
船で自分がいつも意味もなく撮る写真のポイントと同じ場所が何度も出てきて、なんか嬉しかった。
片倉ひかり役の蒔田彩珠。是枝監督作品で重用されてきた彼女が河瀬監督作品に登場って感じね。
主演は永作博美演じる特別養子縁組で母になる佐登子と井浦新演じる清和ではあるのだけど、ひかりのことの方がやっぱり残った。
最初は、栗原家の二人の妊活。それは容易いことではないことが描かれる。
たまたま観たテレビの特集から特別養子縁組のことを知る二人。
子育てをしなければ夫婦じゃないのか?な気持ちしか沸かないような私ではあるのだけど、子育てができる環境があっても子供がないところがあり、子供はいるが子育てが出来ない人が居る。
その特別養子縁組はこれからの日本には必要なシステムなのかもなぁ〜も感じるが、難しい問題。
産みの親と育ての親という存在。
この映画のような産みの親が未成熟で常識やら世間体やらを認識できてない場合は、その親によってすべてが決められてしまう。
親にとっては自分の投資先の成長を妨げるものからどう救うかを考えるのだろうが、心を救えてはいない。
本人以外は出産さえしてしまえばもとの生活に戻れるという根拠のないことで本人を苦しめる。
その相手となった男子とは結局は別れさせられるのだろう。
幼心に好きだった関係が大人によって引き裂かれてるわけだけど、男子は自分の痛みとしてどこまでひきずるものか?
ひかりは結局、もとの生活に戻そうとする家族との軋轢で結局は自分の人生を止めてしまったわけで。
子供が養子であることを周囲にきちんと告げておくことは将来的なことを考えたら大切。
映画の冒頭は義理の母である佐登子が養子の朝斗を信じきれるのかという試されているような状況。
養子縁組を受ける夫婦は年齢が高い。その分、人間として器の大きさはあるのかもしれない。
ママ友に陰口を叩かれても子供のことを信じることを選択する。
謝ってしまえば、その場は繕えることの方が多いだろうが、そうすることで子供の心は殺される。
実子であっても余裕のない親子関係だとつい楽な方へいき、親子関係が崩れるなんてことは多々あるわけで、やっぱりどんな関係でもまず親は子供を信じることが必要だと教えてくれる。
特別養子縁組の浅見役の浅田美代子さんの存在感が大きかった。
望まれない子供を身ごもった人を住まわせ、出産後に希望する家庭へと橋渡しする。
浅見のような立場でも出産後の少女たちの心のケアができるわけではない。
出産したあとの女性はどうしているのだろう?
養子を受けた夫婦はきちんとうまく家族になれるのだろうか?
6年後に「自分の子供を返してください」とお金の要求をしに来るような人生になってしまった彼女の心は救われて、その後の人生をうまく生きていけてるのか?
特別養子縁組はほんとこのくらいの子供だといいと思うが、厚労省の「親を必要としている子供がいます」というコピーには違和感を感じる。
親が育児出来ない子供は児童相談所から養護施設で生活をするようなケースがあるが、既に産みの親の記憶がある子どもに突然育ての親を斡旋するのはどうなんだろう?
特に中途半端な養子縁組は子供を傷つける。養子縁組を斡旋する段階ではいろいろと面談やらするのだるが、その後のケアはどうなんだろう?
子供を授からずにアラフォーになった夫婦が突然思春期や第一次反抗期が終わった子供を引き受けるべきではない。
既に人格形成が終わった子供に新たな概念で自分たち仕様にするのは不可能なんだから。
子供が「親が欲しい」なんて思っていると決めつけるなって感じで。自分の産みの親の記憶だけでも育つはずだ。