マル暴と言う名のヤクザ
映画の舞台は昭和63年。
昭和が終わる頃の日本。
広島という地だけではないのだろうという想像がつく。
ほとんどが昭和のおじさま方
公開初日、一番大きなスクリーンではなかったのだけど、それなりに入っている感じ。
ほとんどがお一人様って感じの座席。
終わってみて思ったのは、「あれ?女性って自分だけ?」
ほとんどが60代前後のおじさん。
今の時代の子が見てもほんとフィクションの世界と思われるのだろう。
でも、昭和を生きてきた人にはノンフィクションに感じる。
これでもかなりオブラートに包まれた抗争だろう。
作家の柚月裕子さんは同世代の女性。女性目線で書くギリギリのものだったのだろう。まぁそれを映画化するにあたり、どのくらいまたオブラートに包まれたのかわからないけど。
原作を読んでみようと思う。
映画は呉原東署の刑事二課の主任大上章吾ことガミさんの役所広司と県警本部から赴任した広島大学卒業という肩書の新米刑事日岡秀一の松坂桃李の二人を中心とした話し。
バイオレンス系の映画に全く興味のないというか毛嫌いしているくらいなのだが、映画の予告で「これは観なきゃかも」と思わせられるものがあった。
まず、役所広司さん。「三度目の殺人」では主演の福山雅治の影がどっかへいってしまうくらいの怪演。そして松坂桃李の振り幅。今年になって4本目の映画。1本目が「パディントン」の声優、2本目が「不能犯」、3本目が「娼夫」そしてこの「孤狼の血」。
全てが見事に違うタイプだ。まぁ「不能犯」に近いかと思ったがそうでもなく、「娼夫」的な影を持った変な正義感があるのかと思えばそうでもない。
それでも、田岡の変な自分勝手な正義感が当てはまる。
昭和63年。
まぁ昭和の時代なんてヤクザの抗争なんて日常茶飯事のように今の芸能ニュースと同じくらい日々報道されていたような気がする。
まぁ学生時代だからテレビを見てなかったけど、新聞ではそんな報道が多かった。
映画はまず養豚場でのリンチから始まる。
まぁ最初から目をそむけたくなるようなシーン。
豚の糞を食べさせるというのはやっぱり屈辱的な行為なのだろうか?
まぁどの糞でも食べさせられるのは嫌だわ。
呉原金融という五十子会のフロント企業の経理が行方不明だと届け出るMEGUMI演じる上早稲潤子。その経理は兄だと言う。まぁリンチされてたのがこの兄なんだけど、MEGUMIだったの?え?まぁ胸の大きさはMEGUMIだったかもしれないけど、顔が別人。気づかなかったわ。
ガミさんは田岡にかき氷を作らせて取調室に持ってこさせる。そして、田岡を退室させてなんと身体の関係を持って、詳細をしゃべらせる。
まぁ昔なんてこんなことあったのかもしれないと思わせられるのがすごいけど。
ガミさんは呉原金融が五十子会の下部組織、加古村組が絡んでるとみて、加古村組の構成員の勝矢に因縁をつける。そして、上早稲の失踪に絡んでいることを認識する。
そこには田岡の多大なる被害もある。
田岡はガミさんのやり方に反発する。
クリーンなやり方でどうヤクザとやり合うのかとこっちも不思議になるくらいの正義感だけの塊である。
怪我をした田岡を薬局に連れていき、阿部純子演じる岡田桃子に手当をさせる。
ガミさんのやり方はまぁクリーンとは言えないが、ヤクザがいざ抗争になればカタギにまで害が及ぶことを危惧した中で自分がやらなきゃという意識で向かう。
それは組長が収監されている尾谷組に対してかなり甘く感じる。
そうすることで釣り合いを取っているようにも思える。
そういう刑事が昔はいたのだろう。自分の身を危険に晒しながらもギリギリのところで均衡を保つ役割の刑事が。
正義だけで平和が保てるならヤクザはいないはずだ。
それでも法律というものではヤクザはなくならない。そしてヤクザのいなくなった社会は社会で半グレとか中国のヤクザとかいろんな要素が我が物顔で行き交うもっと厄介な社会構成になってきているのではないだろうか?
田岡はガミさんの相棒でありながら、県警から送り込まれたスパイでもあった。
ガミさんを監視し、県警の嵯峨警視の滝籐賢一に報告する。
嵯峨警視に田岡は一刻も早く、懲戒免職にすべきだと申告するが、嵯峨警視は物証を求める。
ガミさんが書き溜めているという「日記」を探すことを田岡に指示する。
ガミさんは上早稲を探すことで加古村組に楔を打ち込むことが出来ると探す。その矢先、加古村組によって尾谷組の構成員が射殺されてしまう。
が、そのことを知らない田岡によって、尾谷組が報復したとして尾谷組の構成員が現行犯逮捕されてしまう。
均衡が崩れかける。
それでもガミさんは違う手で真相を追う。
クラブ梨子のママ、真木よう子を使って。真木よう子、一時すごく痩せた感じだったけど、凄みがあってママっぽいし、色っぽいし、細いのに胸が大きいし。ズルいわ。
殺された構成員はママと付き合い始めたタカシだったこともあり、ママも復讐の念があった。
そして一番怪しかった加古村組の吉田滋の音尾琢真をママ自ら誘い出す。
最近、音尾琢真こういう役が多いなぁ〜と思うけど、そんなに印象に残る顔ではないからいいのかもしれない。
吉田が全裸になったところにガミさん、田岡が登場し、吉田を縛り付けて痛めつけながら自白させる。
上早稲を無人島に捨てた。
無人島で上早稲が発見される。これを尾谷組へ報告することでことが収まる予定だったところで、ガミさんが謹慎処分となってしまう。
新聞記者高坂を中村獅童。まぁ嫌らしいわ。
何も知らない署長にガミさんの過去から違法的行為をたれ込んでいた。
ガミさん不在の中、田岡は一人尾谷組へ行くが、ガミさんが来ないことは裏切ったと言う尾谷組若頭一之瀬の江口洋介。カッコイイわ。
何も出来ない田岡。自宅へ帰るとそこにはガミさんが。
「そんな座敷童を見たように驚くな」
驚くよね。自分が監視していたことを書いたメモからテープからある場所なんだから。
尾谷組は動き出す。そして五十子組へ報復へ出る。
それを仲介するガミさん。
五十子組の会長の石橋蓮司。まぁ似合ってるよね。こういう役。
仲介するガミさんに無茶な要求をする会長。それでもガミさんは一之瀬に要求を伝える。が、のまない。一之瀬は尾谷組組長の伊吹吾郎にも伝えに行くが、一之瀬の言うとおりにするということで決裂してしまう。
そこまでするガミさんを危惧する田岡。
ガミさんの正義とは何なんだ?
理解が出来ない田岡。
ガミさんは「ヤクザにも警察にもどっちにも偏っても行けない。綱渡りそのものだ。もう上がってしまった以上進むしかない。」
田岡はガミさんの身の危険も薄々感じていたのだろうが、どうにもできない。
そのままガミさんは行方がわからなくなる。
が、その後加古村組の一層捜索が入る。
ガミさんの遺体が上がる。
その船がちょっと残念。「平成丸」昭和の時代だったはずでまだ「平成」にはなってなかったはずだけどな。元々「平成丸」があったのかもしれないけど。
ガミさんは多量のアルコールと睡眠薬により誤って海に転落したという県警の会見。
身体には刺し傷が多数あったのに。
田岡は養豚場へ行く。
養豚場は五十子組の下になっていた。田岡はそこでガミさんの痕跡を探す。
ガミさんのライターを見つける田岡。
田岡は部屋に戻り、日誌を見ると自分が監視していた内容にコメントが入っていた。
ガミさんは田岡の存在が自分の監視役だということを知っていた。
そして、ガミさんの日記は梨子のママが持っていた。
それはガミさんがヤクザより怖いもののために集めた情報であった。
そして最後のページには田岡の名前もあった。
今までにも多くのスパイがガミさんのところに送り込まれているということを知り、笑い出す。
自分の役目はなんて浅はかだったのだろうと。
五十子組の決起集会の場で尾谷組が襲撃に入る。その手助けをした五十子組の全日本祖国救済同盟の代表ピエール瀧と田岡であった。
まぁ最後までバイオレンスよ。
石橋蓮司の首を取っちゃうんだから。
それの後片付けをさせられるホテルも大変だわ。
ホテルを使ってもらうのも気が気じゃないだろうけど、断ったら報復怖いし。
持ちつ持たれつって感じなんだろうなぁ〜。
決起集会に県警本部の嵯峨警視も居たが、状況を感知し逃げる。
その後、田岡が尾谷組の一之瀬に手錠をかける。下のものを差し出したものの田岡が「所詮、ヤクザは駒」というガミさんの言葉に従って行動した。
嵯峨警視にガミさんのスクラップブックを渡す田岡。「所詮、ガミさんの妄想ですよ。最後は自分が書き足しましたけど」と。
最後のページは嵯峨警視が現場から逃走したと書かれていた。
県警本部に戻るか?との問いに「いや、まだ悪い刑事が残っているから」と所轄に残る。
若い刑事が正義をどう感じただろう?
その部分が現代の正義になってしまっているように思える。
裏金は?やくざのような刑事は?
スナックでバイトしていた頃、一番キライだったのが、マル暴の客。
刑事という肩書があるかないかでヤクザと変わらない物腰。
国家権力をかざすだけもっと嫌だった。
あと、自衛隊の幹部ね。
あの頃、ほんと今だったら全員クビって感じのことが横行していたと思うわ。
を思い出した映画だった。
「失楽園」以来のスクリーンの数らしい。それでも私の行った映画館では2番目のシート数。ランキング1位を獲れるとは思えないのだけど。どうなんだろう?
先週までの子供映画フィーバーは終わった感じで落ち着いたロビーになっていたけど。
土日で見たら厳しいかもね。団塊の世代の人は平日に行けるわけで。
30代以下の人には理解が出来ないかもしれない内容かもしれない。
演者さんの全てのレベルが高い。バイオレンス系ってただがなってるわけではないなぁって思う。
女性の書いた小説なんだけど、どういう気持ちで書いたのだろう?