偶然見つけたのだけど
去年の10月1日に藤井四段はプロになった。
それから1年のこと、その前のことが丁寧に書かれている。
Book☆Walkerでハガレンを大人買いしてかなりポイントがもらえたので、何か読めるものと検索したらヒットしたくらいな。
「天才」としちゃうのはどうさ?
と思ってたけど。。。
文藝春秋
そんなに書籍になったものを読んでるわけではない。
それでもこの本は電子書籍ではあったが、408ページとかなりボリュームがあるなぁって思った。
私の藤井聡太感は「天才」ではない。
ただ自分の居場所を中学生で確立し、周囲の育て方が成功した人。
本人の努力は努力ではなく、好きなこと。
自分の立ち位置がわかればやらなきゃいけないことは明確でそれを遂行することなんだけど、そこで差が出るのか?
この本は丁寧に藤井聡太を書いている。
「天才」で片付けてるのかと思えばそうではない。
今まで読んだことのある記事やコメントもあるが、まだまだ知らなかった部分もかなりあった。
谷川先生が憧れとか。
「聖の青春」的な感じも受ける。
杉本先生との出会いであったり、奨励会の前のことだったり、奨励会のことだったり・・・
あと三段リーグへの参加が半年待たされる格好になってしまって、杉本先生が「将棋修行旅行」に群馬の三浦九段のところまで連れて行ってくれていたり、東京だったりで多くのプロ棋士の方に練習をつけてもらっていたとか・・・
本当に杉本先生を師匠にして良かったねって思う。
杉本先生が藤井聡太を知った時のことが詳細に書かれているのが印象的だ。
東海研修会という会場で小学校1年生の藤井少年が天然パーマで永久歯が生え変わる時期ってほんとかわいい男の子って感じの時に会ったと言う。
そこには杉本先生の師匠の板谷一門の話などもある。
そう、かなり脱線するのだ。
それでもなぜ藤井聡太が出来たかという根底の部分じゃないかと思う。
持って生まれた天才ではない。
藤井聡太という天才を作り上げるために仕掛けられた様々な環境が書かれていると思う。
今の藤井聡太からは想像もつかない幼少時代だったらしい。
研修会の師範にはよくいる強い子とヤンチャで元気のいいガキんちょって言うコメント。
そういう人間らしさが伝わるコメントっていいなぁって。
なんかどこから今のような落ち着いた感じになったのか知りたいわ。
それでも事務仕事をしているこの師範の膝の上に座り、きゃあきゃあしていると思ったら、対局が始まるとすごい集中力を発揮する。
それがやっぱり凄さになっていくんだね。
負けたら泣いてた
良く聞くコメントだったりするけど、実は泣いてなかったんじゃないかって。
号泣というのではなく咆哮じゃないかと。
悔しいあまりに腹の底にたまった悔しさが湧き上がって口からほとばしっているのだと・・・
この辺の件はやっぱり納得してしまうものがある。
今は、そういうこともなくうまく感情をコントロールしているけど、内心はどうなんだろう?
公式戦、非公式戦ときっとこの1年で10敗くらいはしているだろう。
誰の門下に入るか・・・
彼の奨励会への受験にあたって杉本先生しかいなかったような印象を私は持っていたけど、実はそうでもなかったらしい。
東海研修会には他の棋士も指導に行かれていたという。
中田章道七段
浦野真彦八段
浦野八段も師匠候補だったとは!
第3戦、第4戦と対局して負けてAbemaTVで「藤井聡太被害者の会」とかって・・・
それでも藤井家では杉本先生に正式に依頼をする。
いろんな棋士の中でなぜ杉本先生を選ばれたのかいつか聞いて欲しいところでもある。
杉本先生とお母さんが会話している横で小学4年生の藤井少年は無口にクリームソーダを飲む。
が、クリームソーダにソフトクリームを沈めてから食べようとしてソーダが溢れ出すを繰り返す藤井少年に杉本先生・・・
「まず先にちょっとソーダを飲んじゃいなさい」
初めての指導はクリームソーダの飲み方だったらしい。
杉本先生の考え方は「ファンの大切さを忘れるな」
この教えがあるから彼の会見の対応になっているのだと思う。
日本のトップアスリートにはこういう師弟関係で指導ありなしでかなり変わってるなって思う。
一番最近だと清宮選手がなぜあそこまでになってるかって言えば、両親の特にお父さんがきちんとそういうことを教えているのではないかと思う。
技術とか進路とかではなく、支えてくれている人のことを考えることを。
技術だけが優れている人はたくさんいるがきちんと話せる人は少ない。
もし、藤井少年が他の名前だけの師匠につき、技術だけの進歩だけを問われていたら、きっとここまでのフィーバーにはならなかったのではないだろうか。
対局後、感想を聞かれる。
どの対局でも先輩棋士に勝ってるわけで普通なら萎縮してしまうような場面でも自分の対局を落ち着いて返した姿勢が共感を得た。
この本でも書かれているが、彼は一度として対局相手を持ち上げたりはしない。非公式戦で羽生先生に勝った後でも自分のことだけを言う。
悪くしてしまった。 運が良かった。
そう、それが本当はすごく良かったのだ。
ここで相手がどうだったからと言う発言にしてしまえば、案外生意気に取られてしまうし、相手にも失礼だ。
藤井聡太は対局はしているが、常にあるのは「自分が強くなる」であり、相手が誰であってもも関係ないのだ。
その姿勢に私はきっと応援したくなったんだということに気づいた。
他の棋士の対局はまだまだ放送されることが少なく、どういうお人柄なのかわからない。
この本では29連勝の全対局のコメントもある。
あと対局相手のことも書かれている。
「4段、5段の人との対局が多かったから」
29連勝で確かに前半は予選だったので4、5段の方との対局が多い。
でも、彼らもプロであるし、経験もある。
数々の成績を残している若手も居る中での勝ちだよね。
終盤に「永瀬六段、斎藤七段、三枚堂五段」のインタビューや彼らの思いが載せられている。
この三人は2004年奨励会入会といういわゆる同期らしい。
羽生世代の次の世代の厚さのある世代だと思う。
彼らが藤井少年を知る過程やその後が書かれている。
ちょっと上のこれから絶対壁になる存在の彼らがどう見ているのかってすごい読み応えたあった。
まぁそこに佐々木勇気六段も入ってるわけで。三枚堂五段と佐々木六段が幼馴染ってことも初めて知ったわ。
最近、藤井聡太以外の「将棋」の世界をいろいろWebとかで読んでる。
プロ同士で考える藤井聡太の強さとは。
素人ではわからない部分が書かれている。
これはね、必見だね。
書籍も手に取ってみようかな。
2年目が始まる。
まだまだ序盤戦。ひとつの大記録を残したけど、これはあくまでも神さまのプレゼント。
これからの更なる活躍に期待。
毎年、こういう企画本が出るような棋士で居て欲しい。
- 作者: 中村徹,松本博文
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/09/29
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る