【映画 幼子われらに生まれ】感想。浅野忠信父の苦悩が現代を映してる。

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親愛なる、傷だらけの人たちへ。

とても重いテーマの映画だと思う。

重松清さんの傑作小説が原作となっているが、女性監督ということもあり、とても繊細に撮られているという感じになる。

男性監督だったら同じ脚本でどう描くだろう?

血の繋がらない家族、血の繋がった他人

子供は親を選べない。

離婚しても血の繋がった実の娘に会うことを楽しみにしている、浅野忠信演じるパパ。

再婚した家にも実の娘と同じ年の娘が居る。

娘との再会シーンから始まる。嬉しそうなパパと娘。

両親は他人だけど娘にとってはどちらも「親」だから母親が再婚したとは言え、パパと会えることは嬉しいものなのか?

現代では普通にある光景なのか。

こういう再開は子供がいくつまで続けられるものなのか?

なぜ離婚のときに母親が親権を取るのだろう?

キャリアウーマンの寺島しのぶの声は働く女性には当たり前の「声」だと思う。

それでも女性の立場を理解されずに妊娠させられて、それを拒絶するように堕胎したのに、流されて妊娠して娘を授かり結局は離婚する。

なぜ男はそんなに身勝手なのだろう?

身籠り、出産してすぐに仕事復帰できる人なんてそうそう居ない。

「じゃあ、自分が育てる」とも言わないでどうすることも出来ないわけでしょ。

そして子供は母親が引き取って離婚。面会を年4回認めてもらっている。

いいとこどり。

子供を育てる苦労を一切せずに会うことしかしない男ってどうなんだろう?

そして今度はシングルマザーの子供が2人いる女性と再婚する。

娘と同じ年の娘の居る家庭で新しい家庭を作る。

小学校6年生になる再婚家庭の娘はパパの心が自分の家族にないことを深層心理で感じている。

ケーキを買って帰ったりして表面は良いパパではあるが、子供はそれじゃないんだろう。

自分たちよりも会いたい存在がいることがどこかに引っかかっている。

それが思春期の娘はダイレクトに突っかかる。

「本当のパパに会いたい」

その頃、再婚相手の田中麗奈演じるママのお腹に新しい命が宿る。

それについてもパパは悩む。

仕事も中途半端で家族サービスを第一にしているために出向になる。

この人の幸せはどこにあるのだろう?

今しか子供とは遊べないし、抱っこできない。

そうかもしれないけど、仕事が充実してのことだよね。

出向になって給料が下がり、帰宅も遅くなる。家族に対してのサービスが減っていく。

娘からのダイレクトの要求。それを妻は認めない。というか、あんたが娘にちゃんと説明しないからじゃないのか?

「今、生活出来ているのはパパが働いてくれてるから」ということを当たり前のことじゃなく、教えなければいけないことなのではないだろうか?

それに対して苦悩するパパ。

本当のパパは生まれた下の娘の夜泣きに「殺せ」と言ったり、DVをされての離婚。その後に娘は大人の男性が苦手だったはずが、パパに会って良くなったことなんて忘れてしまうのか。

お互いに会った時の気持ちを思い出せばいいのにと思ってたわ。

タイトルから言って、赤ちゃんが生まれてどうこうなのかと思ったけど、そうでもなかった。

実の娘が会いに来る。

再婚した新しいお父さんがガンで余命いくばくもないのだけど、悲しくないのだと。

ママがいなくなったらどうしようと思った時の胸を締め付けるような感情が沸かないのだと。

そこにママから電話で危篤だと言われ、雨の中病院へ送る。

パパの家族の居る車で送られる娘。

再婚したママは本当は会ってほしくないと思っているからいい顔をしない。

それでも病院についたパパについて行ったら?とパパは新しいお父さんに会うことに。しかし・・・既に息絶えていた。

そこからちょっとだけパパは変わった感じだ。

少しだけ家族に向いた感じ。

でも、娘は本当のパパに会いたいしか言わない。

本当のパパの宮藤官九郎はギャンブル好きの料理人だ。

借金でクビが回らないと10万を渡し、娘に会うことを約束させる。

これは・・・娘のためなのか?どういう感情なのだろう?

なぜ他人の親子関係なのにパパがここまで関与しなきゃいけないんだ?

娘は結局は会いに行かない。

パパはクドカンに会っていないことを告げられ、その下の娘を見るクドカンの顔がちょっと嬉しそう。

娘もちょっとだけパパに素直になる。

出産。

生まれた直後に娘は病院へ。

これはやっぱり親の愛情を試していたということなのか?

生まれた場面で終わり。

浅田忠信のパパぶりが今の時代の反映なんだろうなぁって。

結婚もだけど、子連れ再婚ももっと子供のことを考えてと思ってしまうが、子供を育てるにはと思えば再婚やむなしになってしまうのだろう。

ステップファミリーの在り方を考えさせられる映画だと思う。